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人権教育のための世界プログラム 第1 段階(2005年~2007年)のための修正行動計画

配布先:一般
2004年10月
原文:英語

国連総会

本文

添付文書

初等・中等学校制度における人権教育の構成要素

1. それぞれの国の文脈は学校制度における人権教育の実践の促進および導入のための可能性や戦略に相当な影響を及ぼす。しかし、そこから生じる多様性を超えて、人権教育を発展させるための共通の傾向やアプローチを見出すことができる。この添付文書には5つの構成要素を包括的にあげているが、これらの構成要素は世界で成功した既存の例、および調査、研究、ならびに本行動計画案、「人権教育のための国連10年」(1995-2004)の中間評価(2000)および最終評価(2004)作成のための協議に基づいたものである。これらの構成要素は本行動計画案の主要な主体が段階的に、漸進的に目指すよう要請される優れた実践例を形作るものである。またこれら構成要素は例示であり、規範的なものではない。これらは選択肢を提案し、とり得る道筋を示すものであり、参考にすべき道具となる。これらは本行動計画案の国内実施戦略に沿ってそれぞれの文脈に適応させる必要がある。

 

A. 政策

2. 教育政策は約束したことの明白で一貫した表明と理解される。教育政策は、主に国家で、しかし地域および自治体も含めてそれぞれの政府レベルで、すべての利害関係者との協力において作成され、すべての教育に関連する主体のための教育制度全体を通した原則、定義および目的を含み、規範的な参照文となる。

3. 教育に対する権利に根ざしたアプローチを促進する人権教育は、教育政策策定および改革の目的ならびに教育の質の基準に明示に表明されていなければならない。

4. 教育に対する権利に根ざしたアプローチとは、学校制度が人権と基本的自由を意識するようになるということを示唆する。人権が教育制度全体およびすべての学習環境に浸透し、実施されていなければならない。人権は教育目的としてまた教育の質的規準として、憲法、教育政策の枠組み、教育関連法および国のカリキュラムや計画などの主要な参考文書内に含まれている。

5. そのために、学校制度のなかの人権教育のための政策策定の主要な特徴に対応して次の措置があげられる。
(a)非政府組織(NGO)、教員団体および組合、職能および研究団体、市民社会組織および他の利害関係者を教育政策文書作成に関与させることにより、政策策定に参加型手法をとりいれること。
(b)人権教育に関する国際的な義務を果たすこと。[6]

(i)教育の権利に関する国際文書の批准を促進すること。

(ii)子どもの権利委員会、経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会などの関連する国際的なモニタリング機関に対する国家の報告に人権教育に関する情報を含めること。

(iii)上記の国家の報告作成に当たり、NGO、市民社会の他の部門、人権教育専門家と協力すること。

(iv)国際的な監視・評価機関の勧告を公表し、遵守すること。
(c)教育および人権教育に対して権利に根ざしたアプローチのための政策や法律を策定すること。

(i)人権教育を教育法に含めること。

(ii)すべての法律が人権教育の原則に沿っていることを確保し、法律に矛盾がないかどうか監視・評価すること。

(iii)人権教育に特定した法律を制定すること。

(iv)政策が関連する人権教育に関する研究に基づいていることを確保すること。

(v)学校および学校の指導者が自主的に意志決定や革新を行えるよう力をつけること。

(vi)教育の成果に関する報告(説明責任)のための政策が人権の原則に沿っていることを確保し、人権教育のための個別の説明責任の政策をつくること。

(vii)自治体当局に対し、人権教育を実施し支援する役割および責任に関する指針を提供すること。
(d)政策開発に一貫性を確保すること。

(i)国家の初等・中等教育に関する部門別計画に人権教育を含めること。「万人に教育を(EFA)」の国家計画、「国連持続可能な開発のための教育の10年(2005-2014)」の一環としての国家政策枠組みなどにも含めること。

(ii)人権教育を人権教育のための国内計画、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連する不寛容と闘う国内行動計画、貧困削減のための国内戦略に含めること。

(iii)異なる計画およびそれぞれの人権教育に関する部分の間の一貫性、関連性および相乗効果を確保すること。

(iv)教育政策と他の部門の政策(司法、社会、青少年、健康など)と関連させること。
(e)人権教育をカリキュラムに含めること。

(i)政策が関連する人権教育に関する研究に基づいていることを確保すること。

(ii)国家のカリキュラム全体および教育の基準において、人権価値、知識および姿勢を、読み書きと計算に関する基礎知識を補完する基本スキルおよび能力として認めること。

(iii)概念および目標、教授・学習目的および手法をあげた人権教育に特定した国家カリキュラムを作成すること。

(iv)カリキュラムにおける人権教育の地位を学校に応じて、および義務的または選択であるか、科目としておよび/または(人権がすべてのカリキュラム内科目に含まれる)科目横断的であるかを定義すること。

(v)人権の教授・学習を特に市民教育、社会科および歴史の科目の完全な明示の要素とすること。

(vi)人権教育の教授・学習を学校別のカリキュラム(学校が決定する教授・学習プログラム)の完全な明示の要素とすること。

(vii)人権教育を職業教育および研修に含めること。

(viii)人権原則に沿うよう教科書を改訂するため、および人権教育に特定した教科書を開発するための指針を制定すること。

(ix)学校の統治、運営、規律、包括政策、および学校文化や教育権に影響を及ぼすその他の規則や実践において人権に根ざしたアプローチを促進すること。

(x)人権を児童生徒が必要とされる能力の一部に含めること。

(xi)人権価値、知識および姿勢に関する児童生徒の成績の評価および意見のための適切な手続を開発すること。
(g)人権教育の包括的な研修政策を採用すること。それには次の点を含めること。 

(i)研修指導員の研修、校長、教職着任前および現職の教員の研修、および他の教職員の研修。

(ii)教職着任前および現職中のすべての教員研修政策およびプログラムにおける児童生徒および教員の権利、責任および参加に関する情報。

(iii)人権教育の研修活動を行っているNGOおよび市民社会の他の部門の認識、認証、および支援。

(iv)教職員の資格、認証およびキャリア開発、およびNGOの研修活動の認証の基準として人権を予定。

 

B. 政策実施の計画

6. 実効性のある教育政策開発および改革は明示の政策表明および明確に定義された措置、仕組み、責任および資源を含む一貫した実施戦略を必要とする。そのような実施戦略は政策の一貫性、監視・評価、説明責任を確保する手段である。その戦略は、政策と実践、ことばと現実との格差、さらには実践されても、散発的で一貫性がなかったり、その場限りで随意に行われるようなことを回避する一助になる。

7. 人権教育は教育制度全体の変化を示唆する。しかしそのような教育の変化を保証するには、政策表明や公約発表だけでは十分ではない。政策実施を計画することは実効的な人権教育の鍵となる。

8. 人権教育政策の実施は分権、民主的統治、学校自治、および教育制度内における権利と責任の共有に向かう教育の統治に関する最近の傾向に沿ったものでなければならない。地方自治体および学区、校長、教員および他の教職員、その組織や組合、児童生徒および親、研究や研修機関、NGO、市民社会の他の部門および共同体などの利害関係者の多様性をみれば、教育制度の責任は教育省だけにあるのではないし、あるべきではない。

9. 国家当局および地方自治体/学校レベル双方が教育の統治、改善および革新の責任を負うという事実はそれぞれのレベルにおいて特定の役割があることを示唆する。中央当局の役割は共通の政策枠組と実施および説明責任のための仕組みを設置することである。地方自治体/学校レベルの役割は地方の多様性とニーズを考慮しそれに対応する方法を探し、人権を含めた個別の学校側面図をつくることである。さらに、教育目標の所有と、教員や他の教職員、親および児童生徒による教授・学習の実践の開発を確実にする必要がある。

10. この文脈において、次にあげる側面は政策実施の組織のため、および国家当局による主要実施措置のためのよい事例を示唆するものである。
(a)政策実施の組織

(i)措置の種類、任務の分担、それぞれの教育機関の責任の明確化、これらの機関の間の意思伝達および協力方法、道標をつけた政策実施の予定表(本行動計画案の国家実施戦略の第2段階も参照のこと)、を含む人権教育の分野において国内実施戦略を作成すること。

(ii)教育省内に国内実施戦略の調整担当局/課を設置または強化すること。

(iii)社会的および法的問題、青少年、ジェンダーなどを扱う人権および人権教育に関連する他の部門や部局の間の協力を確保すること。

(iv)実施の一貫性を確保するために、この分野に関わるすべての関連する主体による連合の設立を促進すること。
(b)政策実施のための措置

(i)十分な資源(財源、人材、時間)を人権教育に配分すること。

(ii)利害関係者が政策開発および実施に完全に、実効的に関与できるよう適切な仕組みを設置すること。

(iii)上記の国内実施戦略を公表・伝達し、関連する主体、受益者および一般の人に議論され、承認されるよう確実にすること。

(iv)A章5条(d)にあげられるさまざまな計画の責任担当者の間の意思伝達と協力を組織すること。

(v)人権教育の取り組みを教育制度全体に取り込む前に、選抜した学校で試験的に試みることを検討すること。

(vi)取り組みや情報(さまざまな状況や国、教材、イベントからの優れた実践例)の収集および発信のための資料センターを特定し支援すること。

(vii)例えば人権の知識、学校における人権教育の実践、生徒の学習成果、および人権教育の影響などに関する研究を支援し促進すること。

(viii)人権教育に特定して取り組む学術センターによる研究、ならびに学校、研究機関および大学の学部間の協力を通した人権教育の研究を奨励すること。

(ix)国際調査および比較研究に参加すること。

(x)教育全般において(学校の自己評価および開発計画、学校検査を含む)権利に根ざした教育の質を保証する制度を作り、人権教育の質を保証する仕組みをつくること。

(xi)学習者および教育者が自ら力をつけたり振りかえることができるよう、監視や評価の過程に直接関与させること。

 

C. 学習環境 [7]

11. 人権教育は認知学習を超えるものであり、教授・学習プロセスに関わるすべての人の社会的、情緒的成長を含む。人権教育は、学校共同体の中で、またそれを取り囲む広い共同体との相互作用において、人権が実践され生かされるような人権文化を構築することを目的とする。

12. その目的のために、人権の教授・学習が人権に根ざした学習環境で起こることを確保することが不可欠である。教育目的、実践および学校の組織が人権価値および原則に合致していることを確保することが不可欠である。同様に、それらの原則が学校内、および学校を超えた文化および共同体に根づいていることも不可欠である。

13. 権利に根ざした学校とは相互理解、尊重および責任によって特徴づけられる。そのような学校は地域教育集団の全員に、機会平等、帰属意識、自治、尊厳および自尊心を醸成する。それは子ども中心で、適切かつ意味のある学校であり、そこでは、人権は、すべての人にとって学習目的であり、学校の理念であると明示的かつ明確に確認されている。

14. 権利に根ざした学校は地域教育集団全員の責任であり、学校の指導部がこれらの目的を達成するために有利な、達成を可能にする条件をつくる第一義的責任を負う。

15. 権利に根ざした学校は次の要素の存在と実効性を確保する。
(a)学校における人権のための政策表明および実施規定が共有され、次の点を含む。

(i)明確な役割と任務の分担に基づく生徒と教員の権利と責任に関する憲章。

(ii)紛争解決手続、および暴力やいじめに対処する手続を含む、暴力、性的虐待、いやがらせ、体罰のない学校のための行動規範。

(iii)入学許可、奨学金、進学、昇進、特別プログラム、適格性、および機会を含み、地域教育集団の全員を差別から守る非差別政策。

(iv)祭典、賞により人権における成果を認め褒め称える。
(b)権利に根ざした学校における教員は次の点を有する。

(i)学校指導部からの人権教育に関する明示の権限・任務。

(ii)人権の内容と方法論に関する教育および継続的な職能開発。

(iii)人権教育における新しい、および革新的なよい事例を開発し、実施する機会。

(iv)地方、国内および国際レベルにおける人権教育者のネットワークを含む優れた実践例を共有するための仕組み。

(v)人権原則を反映する教員の募集、維持、および昇進のための政策。
(c)権利に根ざした学校における児童生徒は次の点を有する。

(i)年齢や能力の成長に応じた自己表現、意志決定における責任および参加の機会。

(ii)自分たちの利益を代表、仲裁、主唱するための自分たちの活動を組織する機会。
(d)次の点を含めて、学校、地方自治体およびより広い地域社会の間の交流が存在する。

(i)子どもの権利および人権教育の主要原則に関する親および家族の啓発。

(ii)人権教育の取り組みおよび事業への親の関与。

(iii)親の代表組織を通した学校の意志決定への親の参加。

(iv)共同体において、特に人権問題に関する児童生徒の課外学習課題および活動。

(v)意識高揚や児童生徒の支援のための青少年グループ、市民社会および自治体との協力。

(vi)国際交流。

 

D. 教授および学習

16. 学校制度において教授および学習は人権教育の主要プロセスである。

17. これらのプロセスが何を伴うのか、初等・中等教育においてどのように組織するのかに関する法的および政治的基盤は、人権教育政策によっておよび教員や他の教職員の教育および職能開発を通して提供されなければならない。

18. 学校制度内の人権教育の導入および改善には、プログラムの目的および内容、資源、方法論、評価および査定を統合すること、教室の外を見ることによる、また地域教育集団のさまざまな人々とのパートナーシップを構築することによる教授・学習への全体論的アプローチを採ることが必要である。

19. 質の高い人権教育の教育と学習を達成するためには次の側面が必要である。これらの側面は国家および学校レベルにおける政策策定者、教員や学校の他の職員に向けられたものである。
(a)教授・学習内容と目的に関して。

(i)取得すべき基本的な人権に関するスキルおよび能力を定義すること。

(ii)人権教育をカリキュラムのすべての側面に含め、初等教育のできるだけ早い時期に開始すること。

(iii)人権教育の学習内容および目的を児童生徒の年齢と能力の発展に適応させること。

(iv)認知(知識およびスキル)および社会的/情緒的(価値観、姿勢、行動)学習成果に同等の重要性を付与すること。

(v)人権教育の教授・学習を児童生徒の日常生活および関心に関連させること。
(b)教授・学習の実践および方法論に関して。

(i)それぞれの児童生徒の人権、尊厳の尊重の点から一貫した教育方式を採り、児童生徒に平等な機会を提供すること。

(ii)教室および地域教育集団に子どもに優しい、信頼できる、安全で民主的な雰囲気をつくること。

(iii)児童生徒をエンパワーし、積極的な参加、協力的学習、および連帯感、創造性および自尊心を促す学習者中心の方法および手法を採ること。

(iv)児童生徒の成長レベル、能力および学習方式に適した手法を採ること。

(v)児童生徒が行動によって学習し、人権を実践することができる経験を基盤にした学習手法を採ること。

(vi)教員が促進役、学習指導者および助言者となる経験的教育手法を採ること。

(vii)NGOおよび共同体において活用できる非定型および不定形な学習活動、資源および手法の優れた実践例を利用すること。
(c)教授・学習教材に関して。

(i)人権教材が関連する文化的文脈ならびに歴史的および社会的発展に根づく人権原則に由来することを確実にすること。

(ii)人権教材の収集、共有、翻訳および改作を奨励すること。

(iii)人権原則に合致させるためにカリキュラム全体の教科書および他の教材を見直し、改定すること。

(iv)上記の教授・学習手法への積極的参加を促す、教員指導書、手引き、教科書、漫画および視覚聴覚教材および芸術的副教材などの人権原則に合致するさまざまな教材および資料の開発を支援すること。

(v)十分な数と適切な言語において(多言語国においては教材が理解される言語で開発されるよう、学校における徹底した言語多様性の調査が行われなければならない)、人権教材を発信し、その活用について関連する職員の研修を行うこと。

(vi)これらの資料が人権原則に合致し、現実の生活の状況に関連することを、専門の国内チームが出版前に見直すことによって確保すること。

(vii)NGOが制作したものなど多様な教材の出版、広範な発信および利用を認めること。
(d)教授・学習の支援に関して。

(i)人権教育の教授・学習の優れた実践例を収集し発信すること。

(ii)人権教育の教授・学習に関して、図書館およびデータベースなど、容易に利用できる資料センターを設置すること。

(iii)教育者および児童生徒の間のネットワーク作りおよび人権教育の実践の交流を促進すること。

(iv)人権教育の教授・学習に関する研究を促進すること。
(e)新しい情報技術の活用に関して。

(i)人権教育に関連した専門のホームページを設置すること。

(ii)学校と結びついた遠距離学習プログラムを開発すること。

(iii)人権教育において、新しい情報技術の利用について児童生徒および教員を研修すること。

(iv)地方、国内および国際レベルで他の学校の児童生徒および教員と人権をテーマにしたオン・ライン討論をするグループを促進すること。
(f)評価および査定に関して。

(i)人権教育の過程、成果および影響を検討し、評価し測定する指標を開発し、十分な手法を特定し、適切な手段を考案すること。

(ii)教員および児童生徒同士による観察および報告、児童生徒の経験の記録、個人の作業、取得したスキル・能力(児童生徒のポートフォリオ)、児童生徒の自己評価など人権教育に適切な評価および査定手法を用いること。

(iii)透明性(成績の基準および理由の説明、児童生徒および親の情報)、平等(すべての児童生徒に対してすべての教員により同じ基準が用いられる)などカリキュラム全体における児童生徒の達成度の評価および査定に人権原則を適用すること。

 

E. 教員および他の教職員の教育および職能開発

20.初等・中等教育に人権教育を導入することは、学校が人権の学習と実践のモデルとなることを示唆する。地域教育集団内で教員はカリキュラムの主要保管人としてこの目的を達成する主要な役割を担う。

21.教員がこの主要な責任を実効的に果たすためにいくつかの要素が考慮されなければならない。まず、教員自身が権利の保持者である。その職業に従事する人としての地位の認識と尊重および自尊心の維持は教員が人権教育を促進するための前提条件である。一方では学校の運営者および指導者、他方で教育政策策定者は、教員が教授・学習の実践を革新できるよう支援し力をつけさせなければならない。教員および他の教職員の適切な教育および職能開発が確保されなければならない。

22.地域教育集団内において、人権意識高揚および人権教育の研修の機会は教員のためだけではなく、校長、学校運営に携わる人、視学官、学校事務職員、地方自治体および国家当局の教育担当者および企画者、および親も対象としなければならない。

23.適切な教育および職能開発の企画と組織は複雑な研修制度およびさまざまな文脈により、複数の主体によって分担される。教育省、教育学部および人権研究所やユネスコ人権教育チェアを含む他の機関を通した大学、教員研修機関、教職員組合および職能組織、国内人権機関、NGOおよび国際および地域的政府間組織などである。

24.政策および法的指針が研修実施の枠組みを提供し、人権文化を反映し醸成するためには、研修カリキュラム、教授・学習内容と実践および教育政策が一貫していなければならない。

25.教員の模範としての機能を考えると、実効的な人権教育とは教員が適切な価値観、知識、スキル、姿勢および実践を習得し、それを伝達することを示唆する。教育および職能開発は教員の人権に関する知識、傾倒および動機付けを醸成しなければならない。同様に、人権原則は他の教職員の職業上の業績および行動の不可欠な基準でなければならない。

26.教職員の研修および職能開発はそれぞれの文脈における必要性および対象グループに適応していなければならない。それには教職員の啓発、研修指導員の研修、教職着任時、着任前、および現職者研修を通した定期的および継続的発展、人権教育を専門とする教員の研修、すべての初等・中等学校教員の研修のカリキュラムへの人権原則の導入が含まれる。

27. 教職員の教育および職能開発に関する政策および実践は次の要素とアプローチを考慮に入れなければならない。
(a)次の要素を含む人権教育の研修カリキュラムの開発。

(i)人権、その普遍性、不可分性および相互依存性、およびその保護の機構に関する知識。

(ii)定型、非定型、不定形教育の間の結びつきを含む人権教育の根底にある教育理論[8]

(iii)人権教育および類似の教育の種類(持続可能な開発のための教育、平和教育、グローバル教育、多文化教育、市民性および価値教育など)との結びつき。

(iv)人権教育の学習目的、特に人権教育スキルおよび能力。

(v)人権教育の教授・学習方法論および人権教育における教員の役割。

(vi)民主的で人権に関して一貫している教員および他の教職員の社会的スキルおよび指導様式。

(vii)教員および児童生徒の権利と責任、学校生活への参加、人権侵害の特定と処理。

(viii)人権に根ざした地域共同体としての学校。

(ix)教室内および教室間、教室と学校、より広範な共同体との関係。

(x)教室および学校における協力的手法およびチームワーク。

(xi)人権教育の評価および査定。

(xii)人権教育のための既存の教材に関する情報、およびそれらを検討し、その中から選択し、また、新しい教材を開発する能力。

(xiii)人権原則に基づいた学校の自己評価および開発計画。
(b)適切な訓練方法論の開発および活用。

(i)成人学習者のための適切な訓練手法、特に学習者中心のアプローチ、および価値観および行動に関する啓発に結びつく動機付け、自尊心および感情の発展への対応[9]

(ii)参加型、相互作用、協力的および経験および実践に基づいた方法など人権教育訓練に適切な手法、理論と実践との結びつけ、学んだ技術の業務内、特に教室における試行。
(c)適切な訓練資料および教材の開発と発信。

(i)人権教育訓練のよい事例の収集、発信および交流。

(ii)NGOおよび市民社会の他の部門が開発した訓練方法論の実績調査および発信。

(iii)職務中訓練活動の一環としての教材の開発。

(iv)オン・ライン教材および資料の開発。
(d)さまざまな教育および研修提供者の間のネットワーク作りおよび協力。
(e)国際教育および研修活動、交流の促進および参加。
(f)自己評価および研修活動の関連性、有用性および影響に関する受講者のとらえ方を含む研修活動の評価。

(翻訳:部落解放・人権研究所、アジア・太平洋人権情報センター 翻訳協力:森実)

Endnote:

6. 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、子どもの権利条約、女性差別撤廃条約、人種差別撤廃条約、教育差別禁止条約など。

7. この章では「学習環境」の用語を学校の統治と運営に関わる問題に対応するために用いている。学校の備品、衛生、健康、きれいな水、食糧など学習環境の他の側面は含まない。

8. 一般的に、定型教育は学校、職業訓練および大学教育を、非定型教育は成人教育およびコミュニティ教育や課外活動など定型教育を補完する教育の形態を、不定形教育とはNGOなどが実施するものなど教育制度外で開発されたものをさす。

9. 成人訓練の基本的な方法論の原則について、国連人権高等弁務官事務所発行Human Rights Training を参照のこと。