1948年に世界人権宣言が採択されたあと、その内容を実現していく仕組みが徐々にかたちづくられていきます。世界人権宣言に法的拘束力を持たせるものとして1966年に採択された国際人権規約はその一つですが、先立つ1965年には人種差別撤廃条約も採択されています。
以降、女性差別撤廃条約をはじめとする諸条約が整備されるとともに、先住民族の権利に関する宣言が採択されるなどもしてきました。
こうした条約や宣言には企業活動に関連する内容も含まれており、ビジネスと人権に関する指導原則も、必要な「追加的な基準」として言及しています(原則12の解説、下記参照)。
この点、指導原則の解釈基準を示す「人権尊重についての企業の責任-解釈の手引き-」では、「特定の集団または地域住民に属する人々の権利を詳述した国際連合の人権に関する文書」として、「人種差別撤廃条約」「女性差別撤廃条約」「子どもの権利条約」「移住労働者権利条約」「障害者権利条約」「先住民族の権利に関する国際連合宣言」「民族的または種族的、宗教的及び言語的少数者に属する者の権利に関する宣言」を挙げています。
「状況に応じて、企業は追加的な基準を考える必要があるかもしれない。例えば、企業は、特別な配慮を必要とする特定の集団や民族に属する個人の人権に負の影響を与える可能性がある場合、彼らの人権を尊重すべきである。この関係で、国際連合文書は先住民族、女性、民族的または種族的、宗教的、言語的少数者、子ども、障がい者、及び移住労働者とその家族の権利を一層明確にしている。さらに、武力紛争状況では、企業は国際人道法の基準を尊重すべきである。」(原則12 解説)