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ビジネスと人権に関する指導原則

概要

 2005年に国際連合事務総長特別代表に任命されたジョン・ラギーは、2008年に「『保護、尊重及び救済』枠組」という提案を人権理事会に出し、承認されました。「国家の人権保護義務」「企業の人権尊重責任」「救済へのアクセス」を骨格とするこの枠組みは、各国政府、企業と業界団体、市民社会、労働団体などから広く支持を受け、2010年に発行されたISO26000(社会的責任に関する手引き)や2011年に改訂された経済協力開発機構(OECD)の多国籍企業行動指針にも取り入れられました。
 さらに人権理事会は、ラギーにこの「枠組」を実施するための具体的な原則の策定を求め、それを受けてラギーが提出し、2011年6月に全会一致で承認されたのが「ビジネスと人権に関する指導原則」です。31の原則からなるこの「指導原則」(Guiding Principles)は、すべての国と企業が尊重すべきグローバル基準として、大きな影響を及ぼしてきています。

関連リンク

  • (1) ビジネスと人権に関する指導原則(ヒューライツ大阪 HTML版)
  • (2) ビジネスと人権に関する指導原則(ヒューライツ大阪 PDF版)
  • (3) Guiding Principles on Business and Human Rights: Implementing the United Nations "Protect, Respect and Remedy" Framework
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原文にみるキーワード

■「保護・尊重・救済」
「この枠組は3本の柱に支えられている。第一は、しかるべき政策、規制、及び司法的裁定を通して、企業を含む第三者による人権侵害から保護するという国家の義務である。 第二は、人権を尊重するという企業の責任である。これは、企業が他者の権利を侵害することを回避するために、また企業が絡んだ人権侵害状況に対処するためにデュー・ディリジェンスを実施して行動すべきであることを意味する。第三は、犠牲者が、司法的、非司法的を問わず、実効的な救済の手段にもっと容易にアクセスできるようにする必要があるということである。」(指導原則への序文)

■「企業の人権尊重責任」
「人権を尊重する責任は、企業に次の行為を求める。/(a) 自らの活動を通じて人権に負の影響を引き起こしたり、助長することを回避し、そのような影響が生じた場合にはこれに対処する。/(b) たとえその影響を助長していない場合であっても、取引関係によって企業の事業、製品またはサービスと直接的につながっている人権への負の影響を防止または軽減するように努める。」(原則13)

■「人権デュー・ディリジェンス」
「人権への負の影響を特定し、防止し、軽減し、そしてどのように対処するかということに責任をもつために、企業は人権デュー・ディリジェンスを実行すべきである。そのプロセスは、実際のまたは潜在的な人権への影響を考量評価すること、その結論を取り入れ実行すること、それに対する反応を追跡検証すること、及びどのようにこの影響に対処するかについて知らせることを含むべきである。」(原則17)

■「人権リスク」
「人権リスクは、企業の人権に対する潜在的な負の影響であると理解される。潜在的な影響は防止あるいは軽減することを通して対処されるべきであり、一方で、現実の影響-既に生じたもの-は是正の対象となるべきである。」「人権デュー・ディリジェンスが、単に企業自らに対する重大なリスクを特定し、対処するばかりではなく、権利保持者側に対するリスクをも含むのであれば、これをより幅広い企業のリスクマネジメント・シスムのなかに入れることができる。」(原則17 解説)

「社会的に弱い立場の人々、性によるリスクの違い」
「企業は、社会的に弱い立場におかれまたは排除されるリスクが高くなりうる集団や民族に属する個人に対する人権の特別の影響に特に注意を向け、女性と男性では異なるリスクがありうるということにも留意すべきである。」(原則17 解説)

「オフセット」
「企業は、人権を支持し促進するため、権利の享受に貢献するような諸々のコミットメントや活動に取組むことも出来よう。しかし、このことは、事業を通して人権を尊重することを怠った場合にこれを相殺するものではない。」 (原則11 解説)

他の文書での言及

■「OECD多国籍企業行動指針」
「この章は、企業による人権尊重に関する具体的な勧告のための枠組を定める柱書きで始まる。これは、ビジネスと人権の「保護,尊重及び救済」のための国連のフレームワークに基づき策定され、その実施のための指導原則に沿っている。」(IV.人権 人権に関する注釈)

■「持続可能な開発のための2030アジェンダ」
「民間企業の活動、投資、イノベーションは、生産性を高め、包摂的な経済成長と雇用創出を進める重要な要因である。我々は、小企業から協同組合、多国籍企業までを含めた民間セクターの多様性を認識している。我々は、すべての企業に対し、持続可能な開発における課題解決のために創造性とイノベーションを発揮することを求める。我々は、ビジネスと人権に関する指導原則、ILOの労働基準、子どもの権利条約、及び多国間の主要な環境関連協定等の締約国において、これらの国際的な基準、協定や関連する取り組みに従って労働者の権利や環境、保健に関する基準を遵守しながらダイナミックかつ十分に機能する企業セクターを促進する。」(パラグラフ67)

■「責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス」
「ガイダンスは、責任ある企業行動のためのデュー・ディリジェンスについて、政府およびステークホルダーの間の共通理解の促進も意図している。国際連合の「ビジネスと人権に関する指導原則」および国際労働機関(International Labour Organization)の「多国籍企業および社会政策に関する原則の三者宣言」にもデュー・ディリジェンスについての勧告が含まれており、ガイダンスは企業がそれらの勧告を実施する上でも役立つ。」(序文)


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