国家は、ビジネスに関連した問題を扱う多数国間機関の加盟国として行動する際、次のことを行うべきである。
(a) 当該機関が人権を保護するという義務を果たす加盟国政府の実行力を抑制したり、企業が人権を尊重するのを妨げたりしないことを確保するよう求める。
(b) 当該機関がそれぞれの権限及び能力の範囲内で企業の人権尊重を促進し、要請がある場合には、技術的な支援、能力養成及び意識向上などを通じて、企業による人権侵害に対して保護する国家の義務を果たすよう国家を支援することを奨励する。
(c) ビジネスと人権の課題に取り組むなかで、共通の理解を促し、国際協力を進めるために、この指導原則を活用する。
国家が、国際貿易及び金融に関わる機関のようなビジネスに関連する問題を扱う多数国間機関に参加する場合など、国際的なレベルにおいて、政策上の一貫性を高めることも求められる。そのような機関に参加する場合であっても、国家が国際人権法上の義務を負うことに変わりはない。
そのような機関を通じた能力養成と意識向上は、困難な課題や最良の慣行についての情報の共有を実現することにより、より一貫性のあるアプローチを促すなど、すべての国家がその保護義務を果たすのを助ける上で、極めて重要な役割を果たしている。
多数国間機関を通した集団的行動は、企業の人権尊重に関して国家が地域間の差をなくす助けとなる。それはレベルに達していないもののパフォーマンスを向上させることによってなされるべきである。国家、多数国間機関そしてその他のステークホルダー間の協力もまた重要な役割を果たす。
この指導原則は、この点で共通の基準点となり、関係する全ステークホルダーそれぞれの役割と責任を考慮に入れながら積極的な効果を積み重ねていくための有用な土台となりうる。