国家は、企業活動に関連した人権侵害に対処する際に、国内の司法メカニズムの実効性を確保するため、救済へのアクセス拒否になるような法的、実際的及びその他これに関連するような障壁を減らすための方策を考えるなど、しかるべき手段をとるべきである。
実効的な司法メカニズムは、救済へのアクセスを確保するということの核心をなしている。それがビジネスに関連する人権侵害に対処する能力は、その公正性、信頼性及び適正手続の能力にかかっている。
司法の活用が救済へのアクセスに不可欠であるか、または実効的な救済の代替手段がない状況において、国家は、正当な事案が裁判所に持ち込まれることを妨害するような障壁が設けられないようにすべきである。国家はまた、正義の実現が司法プロセスの腐敗により妨害されないこと、裁判所が他の政府機関や企業アクターからの経済的または政治的圧力から独立していること、及び人権活動家の正当で平和的な活動が阻害されないことを確保すべきである。
ビジネスに関連した人権侵害に関する事案が当然取り上げられるべきにもかかわらず、これを妨げるような法的障壁が生じるのは、たとえば次の場合である。
司法的救済にアクセスするための実際的で手続的な障壁が生じるのは次の場合である。
これらの障壁の多くは、財源、情報や専門家へのアクセスといった、企業関連の人権侵害訴訟の当事者間にしばしば見られる不均衡の結果あるいはこれらの不均衡が組合わさったものである。さらに、積極的な差別を通じてか、あるいは司法メカニズムが設計され、運用されるにあたって当初の意図とは異なる結果を生んでいるかを問わず、社会的に弱い立場に置かれ、または排除されるリスクが高い集団や民族に属する個人が、これらのメカニズムへアクセスし、活用し、そしてその恩恵を受けることに関して、より一層の文化的、社会的、物理的及び金銭的障壁に直面することが多い。そのような集団や民族の諸権利及び具体的ニーズに対する特別な配慮を、救済のプロセス、すなわちアクセス、手続及び結果の各段階ですべきである。