国家は、ビジネスに関連した人権侵害を救済するための包括的な国家制度の一部として、司法的メカニズムと並行して、実効的で適切な非司法的苦情処理メカニズムを設けるべきである。
行政、立法及び他の非司法的メカニズムは、司法的メカニズムを補完し補足する重要な役割を果たしている。司法制度が実効的で、資源とも十分である場合でも、申し立てられた侵害事案すべてに取組むという負担を引き受けることは不可能である。司法的救済は常に必要とされるものではなく、申立人すべてに必ずしも好ましいアプローチというわけでもない。
ビジネスに関連した人権侵害の救済メカニズムのギャップは、必要な場合は、既存の非司法的メカニズムの権限範囲を拡大することにより、及び/または新たなメカニズムを追加することにより、埋めることができるだろう。これらは、懸案事項、関連する公共の利益、及び当事者の潜在的なニーズにより、仲裁や裁定によるもの、または異文化に適切に対応でき、権利適合性のあるプロセス-または、これらの組み合わせを含むもの-というものかもしれない。これらメカニズムの実効性を確保するために、原則31で説明された要件が充たされるべきである。
このことについては、国内人権機関が特に重要な役割を果たす。
司法的メカニズムの場合と同様に、国家は、ビジネスに関連した人権事案の当事者間の不均衡、及び社会的に弱い立場に置かれ、または排除されるリスクが高い集団や民族に属する個人が直面する、アクセスへの追加的な障壁に対処する方策を考慮すべきである。