フィリピンでは、2016年6月に就任したドゥテルテ大統領が、「麻薬戦争」を展開するなか、麻薬所持や売買の疑いで多数の市民が警察官や正体不明の人物によって殺害されています。また、労働問題をはじめ社会問題に取り組む活動家や、人権擁護に努める弁護士などが共産主義者のレッテルを貼られ、脅迫を受けたり、恣意的に拘禁されたり、殺害されるケースが続いています。
そのような深刻な人権侵害の状況を受けて、ヒューライツ大阪、NGO FoE Japan、立教大学異文化コミュニケーション学部など5団体が協力して、世界人権デーにあたる12月10日、日本とフィリピンをオンラインでつないだウェビナー「フィリピンの人権弁護士はなぜ殺されたのか?~ 正義を求める現地からの声」を開催しました。2020年の人権デーに開催したオンラインセミナー「フィリピン-麻薬撲滅戦争とコロナ禍が隠れみのにされる超法規的処刑」のフォローアップとして、事態の新たな展開を中心に報告が行われました。
参加者は約100人でした。
ウェビナーのテーマである人権弁護士のファン・マカババドさん(68)は2021年9月15日、ミンダナオ島の南コタバト州の自宅の門前で、バイクに乗った2人組の何者かに銃殺されました。彼は、ミンダナオ民衆弁護士連合の副代表で、日本向けのバナナ農園での空中農薬散布に反対する住民や、先祖伝来の土地に対する権利を守るために活動する先住民族を支援するなど、周縁化された人々の人権や環境に関わる権利擁護に取り組んできました。
数多くの法律案件に一緒にあたってきたエミリオ・パニャ弁護士は、マカババド弁護士は難しい案件であっても決して選り好みしないで引き受け、権利のために闘う勇敢なクライアントを守る勇敢な弁護士だったと振り返りました。パニャ弁護士は、「なぜマカババド弁護士が殺害されなければならなかったのか、多くの人々が疑問をもっています」と述べ、「正義を求める活動に従事する弁護士に対する攻撃がずっと続いており、活動を萎縮させるような影響をもたらしています」と憂慮しました。「超法規的殺害の加害者には、明らかに軍や警察など国の関係者が関わっています」と強調し、法の支配がゆらぐことに警鐘を鳴らしました。プログラムと報告資料は以下のとおりです。
2021年12月10日(金)19:00~21:00
1. 開催趣旨
2. ドゥテルテ政権下におけるフィリピンの人権侵害
藤本伸樹/アジア・太平洋人権情報センター 当日資料2.pdf
3. マカババド弁護士はなぜ殺されたか:弁護士に対する超法規的殺害
エミリオ・パニャ弁護士/ミンダナオ民衆弁護士連盟 当日資料3-1.pdf
背景解説:石井正子/立教大学異文化コミュニケーション学部 当日資料3-2.pdf
4. バナナ生産現場での人権侵害とつづく労働者たちの闘い
ポール・ジョン・ディソン委員長/スヤパ農園労働組合 当日資料4-1.pdf
背景解説:波多江秀枝/FoE Japan 当日資料4-2.pdf
5. 麻薬おとり調査とある村長の死:親愛なる友人ジョニーの殺害の進まない捜査から見えてきたこと
長瀬アガリン氏/KAFIN Migrant Center(カフィン移住者センター)
背景解説:石井正子/立教大学異文化コミュニケーション学部 当日資料5.pdf
6. 質疑応答
<主催>
国際環境NGO FoE Japan、立教大学異文化コミュニケーション学部、ヒューライツ大阪、アジア太平洋資料センター(PARC)、APLA
協力: Fair Finance Guide Japan
<参考>
フアン ・マカババド弁護士の殺害の公平かつ迅速な調査に関するフィリピンの司法長官への要望書(締切 2022 年 1 月 15 日)
・個人用フォーム:https://forms.gle/XndvLUZh7TefLXgb7
・団体用フォーム:https://forms.gle/AhnoSb7Bu4MKmRPd9
<参照>
https://www.hurights.or.jp/japan/news/2020/12/1210.html
12.10世界人権デー / オンラインセミナー「フィリピン-麻薬撲滅戦争とコロナ禍が隠れみのにされる超法規的処刑」を共催しました(2020年)