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人権教育セミナー「カミングアウトとプライバシー:在日コリアン、部落出身者の経験と思いから考える」を開催しました(2/23)

 ヒューライツ大阪は、2月23日に人権教育セミナー「カミングアウトとプライバシー:在日コリアン、部落出身者の経験と思いから考える」をオンラインで開催しました。報告者は、被差別部落出身者の潮崎識衣さんと在日コリアン3世の金和子さんの二人で、その報告を受けて、北海道大学アイヌ・先住民研究センター准教授の石原真衣さんがコメントをしました。67名が参加しました。
 差別や排除の経験や自らの葛藤を含め、センシティブな内容を語ることになるので、主催者として安心して語る場を作ることを心がけました。まず、学びの場にしたいので、参加者は聞きたいことを聞く、  しかし登壇者は答えたくない質問には答えないということをみんなで確認しました。また、今回は、それぞれの個人の経験と思いを聴くことにしました。一口に在日コリアンや部落出身者と言っても一人ひとりの経験と思いは当然それぞれ違います。また、在日コリアンであるということと部落であるということでの社会に置かれている違いもあります。一方で、それぞれに共通している経験や生きづらさもあるでしょう。在日コリアン同士、部落出身者同士、そしてマイノリティ同士として。企画者として今回のセミナーを含めて、一人ひとりの語りから出発することを大切にしてたいと考えました。
まず、司会進行から、報告者の二人に3つの質問を投げかけ、それぞれが自分の経験の中から答えました。一つ目は、「揺るぎないカミングアウト」をするまでのことー被差別部落出身であることや在日コリアンであることをあえて明らかにしようと決めるまでの経緯。2つ目は、カミングアウトを決めてからのいい出会い、あるいはこれはやめてほしいと思ったこと。三つ目は、カミングアウトとプライバシー権―特にネット上での晒しや言葉の暴力―に関する経験や思いです。
 コメンテーターの石原真衣さんは、コメントの冒頭に報告者の二人に対し、顔と名前を明かして、必ずしもハッピーではない話を共有していただいたことへの謝意を表し、また、自己紹介として、母方の祖母がアイヌで、また父方は琴似屯田兵(会津藩)にルーツがあり、自身は「マルチレイシャル」であると説明しました。そして当事者研究の本を書いた研究者として、報告者の話を受けて、日本社会をどう見るべきかという示唆とともに、二つのキーワードを提示しました。一つは、「不理解」ということ。『人間なき復興: 原発避難と国民の「不理解」をめぐって』で市村高志さんなどが提唱されている言葉ですが、「無理解」はわかっていないことで、「不理解」は、わかっていないことがわからないということ。非当事者は当事者のことをわかりえぬ部分があることを認識することの大事さです。もう一つは、「切断」ということ。マジョリティ(多数派)からの連帯や共生の呼びかけをマイノリティが一旦、切断する必要があるのではないかという提案でした。そうしないとマイノリティが受けた痛みの輪郭があやふやになるからです。マイノリティとの連帯は簡単に言葉だけで生まれるものではないということです。
 主催者としても、報告内容や参加者からの質問、コメンテーターの示唆に多くの刺激を受けました。反差別の人権教育を推進するために、今の時代に必要な感性や知性を磨くセミナーの開催など、引き続き企画を進めていきます。