ヒューライツ大阪は2月17日、イギリス・エセックス大学人権センターのフェローで、長年にわたりジュネーブの国連人権機関を活用して日本の人権問題を発信し、解決に向けて取り組んでいる藤田早苗さんを講師に招いて、対面によるセミナー「国際社会から見た日本」を開催しました。
藤田さんが一時帰国している機会にセミナーを開くのは2018年と2019年に続いて三度目のことで、今回は著書『武器としての国際人権-日本の貧困・報道・差別』(集英社新書、2022年12月)の発刊を記念したセミナーでした。同著は、いわゆる専門書ではなく、国際人権基準および人権保障のための国連人権機関の役割と活用などについて市民に向けてわかりやすく解説しています。
セミナーでは、藤田さんは、「人権とは何か」を説明したうえで、日本における貧困問題、報道や表現の自由、女性差別、入管収容問題などに関して具体例をあげながら、政府の法整備をはじめとする人権政策がいかに国際人権基準と乖離しており、日本が締結している人権条約の監視機関(委員会)が繰り返し勧告している課題について、国連の人権専門家のコメントを紹介しながら説明しました。
藤田さんは、2022年10月の自由権規約委員会による日本報告書審査を通じて採択された勧告のうち、これまでも繰り返し日本が勧告を受け続けてきた「国内人権機関の設立」、「個人通報制度の受け入れ」、「包括的差別禁止法の整備」という人権保障ための大きな枠組み作りについて、人権NGOをはじめ研究者やメディアを含む市民社会は、日々の活動や専門領域という「木」だけを見るのではなく、「森」を見ることで協働して実現をめざすことが大切であると述べました。
参加者からは、「日本の人権状況を国際基準から知ることができた」「日本での人権教育が国際基準からずれていることを認識した」「国内人権機関がないことのデメリットに気づいた」など「気づきを得た」という多くの感想が寄せられました。参加者は47人でした。
<参照>
https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-721246-4 (集英社)
藤田早苗『武器としての国際人権-日本の貧困・報道・差別』