そのとおりです。確かに、1949年制定の「人権擁護委員法」により、法務省の下に人権擁護委員制度が発足し、現在およそ1万4,000人の人権擁護委員が人権相談、人権啓発などに活躍しています。とはいえ、人権擁護委員は、法務大臣から委嘱された民間ボランティアの方々です。つまり、国内人権機関の要件として国連パリ原則が定める独立性が欠如しているため、国内人権機関とは認められていません(用語の説明「国内人権機関」参照)。
また、2002年には、人権委員会の設置を規定する「人権擁護法案」が政府によって、国会に提案されました。この人権委員会も法務省の下に置かれることが規定されていました。ですからやはり、政府からの独立性がありませんので、国内人権機関とは認められていません。結局、この法案は、審議されることなく、廃案となりました。
一方、自由権規約委員会、人種差別撤廃委員会、女性差別撤廃委員会など、日本が加入しているさまざまな国連人権条約の条約実施監督機関が、日本政府に対して、国内人権機関の設置を勧告しています。また、国連人権理事会も同様の勧告をしています。2008年6月、国連人権理事会本会議において日本政府は、この勧告の受け容れを表明しましたが、まだ国内人権機関は設置されていません。
(窪誠)