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  4. 用語の説明「世界人権宣言」

用語の説明

世界人権宣言

 世界人権宣言とは第二次世界大戦後の1948年12月10日に国連総会で採択された「すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準」を示した文書です。世界人権宣言は人類の歴史上、初めて人権の保障について広く扱った国際的な文書です。
 また、この宣言は国連で作成された人権に関する条約や国連総会が採択した様ざまな決議に大きな影響を与えました。

(野沢 勇)

  • 世界人権宣言ができる経緯
    •  第2次世界大戦では多くの人が犠牲になり、基本的人権や人間の尊厳が踏みにじられました。大戦後、国際連合がつくられ、国際社会は悲惨な戦争を繰り返さないように誓い、国連憲章に沿って世界人権宣言を採択しました。世界人権宣言の前文には「人権の無視及び軽侮が、人類の良心を踏みにじった行為をもたらし」たと述べられています。残酷な人権侵害を人類の歴史において繰り返してはならないという決意から世界人権宣言は作られました。
  • 世界人権宣言の構成
    •  世界人権宣言は以下のように構成されています。

       第1条と第2条に世界人権宣言のすべての条文に通じる「人権の大切な原則」が述べられています。そして、第3条から第28条までは「人権に関する具体的な内容」です。
       さらに、第29条と第30条では「社会に対する義務、権利の制限」などが述べられています。
  • 世界人権宣言での人権の大切な原則
    •  世界人権宣言の第1条と第2条は人権の基本原則に関することです。この2つの条文は世界人権宣言の根本となる重要な条文であり、世界人権宣言のすべての条文に当てはまる内容です。
      (世界人権宣言の条文についてはこちら(外務省)をご覧ください。

      第1条「自由平等」

      すべての人は、生まれた時から平等であり、自由です。

      第2条「権利と自由の享有に関する無差別待遇」

      どのような人に対しても、どんな理由があっても差別されない権利があります。
  • 世界人権宣言の具体的な内容
    •  世界人権宣言の第1条と第2条を原則として、第3条から28条までは具体的な内容が述べられています。

      第3条「生命、自由及び身体の安全の権利」

      すべての人は、自由に、安全に生きる権利があります。

      第4条「奴隷の禁止」

      どのような人も奴隷のように扱われず、奴隷のように扱ってはなりません。

      第5条「拷問又は残虐な刑罰の禁止」

      すべての人は、拷問を受けず、人間らしく扱われることが保障されています。

      第6条「人として認められる権利」

      どのような人も、法律によって人間として尊厳をもって扱われる権利が保障されています。

      第7条「法の前の平等」

      すべての人は法律によって平等に守られなければなりません。

      第8条「基本権の侵害に対する救済」

      もし、憲法又は法律によって与えられた人権が侵害された場合は、裁判所の救済を受ける権利があります。

      第9条「逮捕、抑留又は追放の制限」

      どんな人も、理由なくあるいは、不当な理由で逮捕されません。

      第10条「公正な裁判を受ける権利」

      すべての人は、独立して公平な裁判所による公開された裁判をうけることができます。

      第11条「無罪の推定、遡及刑の禁止」

      すべての人は、裁判で有罪とされるまで、無罪として扱われます。また、法律ができる前にした行為は、法律が作られた後に罪に問われることはありません。

      第12条「私生活、名誉、信用の保護」

      すべての人は、プライバシーを守られます。

      第13条「移動と居住の自由」

      すべての人は、自分の国の中のどこにでも移動することできます。また、他の国に行って帰ることも自由です。

      第14条「迫害からの自由」

      迫害を受けているすべての人は、他の国に逃げることができます。

      第15条「国籍の権利」

      すべての人は、どこかの国の国籍を持つことができ、また、理不尽な理由で国籍を奪われることはありません。

      第16条「婚姻及び家族の権利」

      成年のすべての人は、自由にお互いの合意で結婚することができます。

      第17条「財産権」

      すべての人は、自分の財産を持つ権利があり、理由なく奪われることはありません。

      第18条「思想、良心及び宗教の自由」

      すべての人は、自由に考え、また自由に宗教を信じる権利があります。

      第19条「意見及び表現の自由」

      すべての人は、意見を自由に表現することができます。また、異なるところに住んでいる人と意見を交換しあうことができます。

      第20条「集会及び結社の自由」

      すべての人は、平和的な集会を持つ権利が保障され、またこれに参加することができます。また、どのような団体に入ることも強制されません。

      第21条「参政権」

      すべての人は、直接にまたは選挙で選ばれた代表者を通じて自分の国の政治に参加することができます。

      第22条「社会保障についての権利」

      すべての人は、人間としてふさわしい生活をする権利があります。

      第23条「労働の権利」

      すべての人は、好きな職業を自由に選ぶことができ、きちんとした生活ができるような給料をもらえます。

      第24条「休息及び余暇の権利」

      すべての人は、しっかりと休みをとることができます。

      第25条「相当な生活水準についての権利」

      すべての人は、万が一、何らかの理由によって生活ができなくなっても、人としてふさわしい生活を送るよう保障を受ける権利をもっています。

      第26条「教育についての権利」

      すべての人は、教育をうけることができ、小中学校は無料で授業を受けることができます。また、学校では、他の人を大切にできる人を育てるための授業をしなければなりません。

      第27条「文化的な生活に参加する権利」

      すべての人は、文化生活に参加し芸術鑑賞や科学の進歩の利益を受けることができます。また、自分が作ったものから生まれた成果は自分のものとなります。

      第28条「社会的及び国際秩序への権利」

      すべての人は、この世界人権宣言の内容がきちんと実現されている社会に生きる権利があります。
  • 世界人権宣言の社会に対する義務と権利の制限
    • 第29条「社会に対する義務」

      すべての人は、人間を大切にしてくれる社会に対して義務を負います。そのような社会では、自分の権利と同じように他の人の人権を大切にしなければなりません。

      第30条「権利及び自由を破壊する活動の不承認」

      世界人権宣言で定められている権利や自由を、踏みにじることを目的として、国、集団、個人に対して他の権利を侵害することはできないと規定されています。
  • 世界人権宣言と2つの人権規約
    •  世界人権宣言は「宣言」なので、国家が法的義務を負うことはありません。そこで、国連では人権を守るために法的な力をもつ人権条約を作ろうとしました。
       『世界人権条約』を作るに当たり、色々な案が出ました。世界人権宣言の内容をベースにしつつ、自由権や社会権のようなカテゴリー別の条約をいくつか作るのか、或いは、1つの条約として作るのか、意見が分かれました。特に、第二次世界大戦後はすでに冷戦時代に入っており、ソ連を始めとする社会主義諸国が自由権と社会権の内容を1つにした条約を作ることに反対しました。
       そして、国連総会は1952年に長い議論の後、人権条約を2つに分けて作ることを決定しました。
       1つは社会権を中心した人権条約、もう1つは自由権を中心にした人権条約です。1946年から行われていた国際人権章典の作成が1966年にようやく自由権規約と社会権規約の2つの採択をするという結果になりました。