エンパワメント(empowerment)という言葉が様々な場で使われています。もともとは、アメリカの公民権運動から出た言葉だと言われています。辞書では、①権限を与える②能力をつけると訳されていますが、この意味でとらえると、個人が「一生懸命努力して、もっと頑張って、力をつけること」となってしまいます。
エンパワメントとは、本来ある力を取り戻す実践です。人は誰でも生まれた時から、生きる力、個性、可能性、問題解決力など、さまざまな素晴らしい力を持っているということが原点です。あらゆる暴力や社会からの抑圧を受け、傷ついたり、落ち込んだりして、パワーを失った状態になったときに、自分は「かけがえのない大切な存在なんだ」と自己を尊重したり、他者との協同で本来持つ力を発揮し、自己選択、自己決定できるように働きかけ再びパワーを獲得することです。人が本来持っている力を引き出し、取り戻していくための、「人と人との関わり(関係性)」をエンパワメントといいます。
エンパワメントという理論だけで理解するのではなく、その人の本来持っている力を信じ、相手を勇気づけていくこと、そして社会を活性化させる働きかけをしていくことこそ、自分自身のエンパワメントにもつながります。この社会において、お互いの多様性を認め、自他ともに尊重し、人が人として当たりまえに生きていくためには、エンパワメントアプローチが不可欠です。