学校教育をはじめ生涯学習や市民活動の場で、人権教育を進めようとしている 人たちに、人権教育は何をめざすのかを共有するとともに、国際社会で合意された 人権(「国際人権基準」)を学ぶために役立つ授業案や図書、教材などを紹介します。
人権教育に関する文書については、資料館の「人権教育の推進」を参照してください。
人権(human rights= 人間の権利)は、人が、生まれながらに持っている大切な宝であるといわれます。人として尊ばれ、一人ひとりが持つとされる人権は、いつでも、どこでも、そしてだれにでも、同じようにまもられるはずのものです。人権は、一人ひとりが人間として大切にされて生きていくためには、なくてはならないものなのです。
このような人権がまもられるためには、人びとが自分の人権を知っていなければなりません。社会に広く受け入れられた人権がどういうものかを知ることが、他人の権利を大切にし、人権侵害を防ぐ力ともなります。それはまた、いろいろな人びとがその違いを認め合い、支え合うことが大切であり、公正で公平な社会、安全で安心できる社会をつくるために大きな力となります。
国連に集まった世界の国ぐにの代表は、世界人権宣言で、人権の具体的な内容が世界中で知られ、まもられることをめざしました。その後「人権教育」ということばが生まれました。教育といっても学校の正規の教科課程や科目に限られたものではありません。一般社会人、専門的な仕事をする人びと、など幅広い人びとに対して訓練、研修、さらに一般の人びとが参加する生涯学習をも含むといえます。
人権教育は、世界のどこでも人権が大切にされ、まもられるような社会を作ることをめざします。そのために、ただ国際的に認められ、受け入れられた人権についての知識をさずけるばかりではなく、実際に自分と他人の人権をまもるための力や手段を身につけ、社会で人権を大切にする態度や振る舞いを育むことを、学校教育、研修、トレーニング、生涯学習の場を通して伝えていこうとします。
人権教育では、まず人権を知識として伝えるとともに、それがどうして人の権利として大切なのかということをわかるようにすることが重要です。また人権教育は、それに参加する人びとが、人権を大切にするとはどういうことかをお互いの交わりのなかで体験的に学ぶことも大切であるとします。さらに、そのような学習を通して、それぞれの人が自分の個性と資質をいかして、社会の一員として、より公正で公平な社会のために参加することの大切さを強調します。ことばをかえれば、教育を通して人権を身につけることと教育の現場で人権尊重を実現することを求めています。
まとめていえば、人権教育とは、人権について教え、理解をたすけ、人権尊重の価値観、態度を育て、行動へと向かわせるための総合的な教育活動であるといえるでしょう。
このような人権教育の考え方は、1990年代から国連を中心に話し合われてきた結果、今では国際的な共通の理解として多くの国で受け入れられ、実践されています。