ビルマ(ミャンマー)に対する日本の政府開発援助(ODA)事業のひとつティラワ経済特別区開発で立ち退き対象の住民3人が来日し、6月2日に東京の国際協力機構(JICA)に対して、開発に伴う農地喪失や生活手段の喪失などの被害を訴え、解決策を求める異議申立書を提出しました。
住民の置かれた状況を調査・支援しているNPO法人メコン・ウォッチは、事業の影響による強制的に移転が進められた経緯や移転後の経済的な困難、生活環境の悪化などについて、来日住民とともに東京と京都で報告会「ビルマ(ミャンマー)における日本の援助と人権~住民の報告から日本の対応を問い直す」を開催しました。京都での報告会は、メコン・ウォッチとODA改革ネットワーク・関西が6月5日に共催したもので、ヒューライツ大阪は国際環境NGO FoE Japanや日本ビルマ救援センターなどの団体とともに開催に協力しました。約30人が参加しました。
住民男性のひとりは以下のように話しました。
「私は、すでに立ち退きが行われたフェーズ1(400ha)に住んでいたひとり。農民として田畑を耕していたが、いまはそれができなくなり収入がない。これまでは自然の恵みがたくさんあった。ところが、移転先はとても狭く、家屋だけの区画のみで、家畜を育てたりするスペースもない。中には生活のため移転地の家の売却に追い込まれた人もいる。
補償してもらうことが唯一の答ではない。以前の仕事や生計手段に戻してほしい。職業訓練学校を建設して仕事に就けるようにすると政府は約束した。しかし、遠方まで通わなければならない。さらに、大学卒などという学歴要件を持ち出されている。
大型機械やブルドーザーの運転免許をとりたいが時間がかかる。その間、交通費は支給されるようだが収入は得られない。また、子どもが学校に通うために交通費がたくさんかかり、通学を断念している子どもがいる。
住環境については、以前にはあった大きな木(木陰)がないのでとても暑い。井戸はあるが、不純物が混じった不衛生な水しか出てこない。飲み水を買える人はいいが、買う余裕がなければその水を飲むしかない。とりわけ、子どもたちの健康への影響が心配だ。
私は、移転先の家は補償金を使って自分で建てた。政府から350万チャット(約35万円)支払われたが、実際には600万チャットもかかった。私は以前は借金したことがなかったが、今回借金ができてしまい将来が不安だ。
移転には署名を求められたが、私は不満や不安をいだいていたため最後まで拒んだ。しかし、心臓の悪い父のもとに政府関係者が何度も私の署名を迫るようやってきたので、心配のあまり署名に応じたのだ。こうした問題を国内で訴えて解決を図ろうとしたが、らちが明かないので日本にやってきたといういきさつだ」。
フェーズ1では68世帯(約300人)が移転を強いられましたが、残りの開発区域 2,000 ヘクタール内には1,000世帯(約4,500人)が暮らしており、同様の立ち退きの危機に瀕しています。
<参考>
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section3/2014/06/jica62-1.html
ビルマ(ミャンマー)の経済特別区開発について地元住民がJICAに異議申し立て(6月2日)ヒューライツ大阪ニュース・イン・ブリーフ
http://www.business-humanrights.org/Search/SearchResults?SearchableText=JICA
Myanmar: Thilawa Special Economic Zone – summary of impacts, company responses and updates(Business & Human Rights Resource Centre)
Press Release: Japan Must Postpone Thilawa SEZ Financing Until Forced Displacement Reviewed (U.S. CAMPAIGN FOR BURMA)