元人種差別撤廃委員会委員のソーンベリーさん講演会「世界はヘイトスピーチと闘う」を開催(10月23日)
ヒューライツ大阪は、反差別国際運動日本委員会(IMADR-JC)をはじめ、関西で在日外国人の人権課題に取り組むNGOと協力して、元国連人種差別撤廃委員会委員で英国のキール大学名誉教授のパトリック・ソーンベリー(Patrick Thornberry)さんを講師に、10月23日に大阪で講演会「世界はヘイトスピーチと闘う~元国連人種差別撤廃委員ソーンベリーさんを迎えて」を開催しました。自由人権協会(JCLU)が東京に招へいしたのを機に大阪に招いたもので、約130人が参加し、講演と質疑応答が行われました。
ソーンベリーさんは国際法の専門家として2014年2月まで13年間、人種差別撤廃委員会の委員を務めていました。2010年に行われた人種差別撤廃条約の実施状況に関する第3~6回日本報告審査の報告担当で、また同委員会が2013年に採択した一般的勧告35「人種主義的ヘイトスピーチと闘う」を中心的にまとめています。
今回の講演会は、日本において人種主義的ヘイトスピーチが社会問題化し、規制をめぐる議論が活発化してきたこと、8月に人種差別撤廃委員会で第7~9回日本報告審査(日本にとって3回目の審査)が行われ、ヘイトスピーチの法規制を求める勧告が出されたという状況を受けて企画しました。
講演では、ソーンベリーさんは人種差別撤廃条約の趣旨をヘイトスピーチの問題に関連付け、条約の前文は人種主義および植民地主義に基づく差別を非難していると述べ、人種差別は人間の尊厳や平等とは両立しないと語りました。
ソーンベリーさんは、おもに一般的勧告35「人種主義的ヘイトスピーチと闘う」の要点を解説しましたが、「ヘイトスピーチは人権原則の核心である人間の尊厳と平等を否定するものである」「ヘイトスピーチと効果的に闘うために不可欠なことは、人種差別を禁止する民法、刑法、行政法を含む包括的な立法である」と述べました。
「人種主義的スピーチからマイノリティを保護することは、表現の自由と集団保護のための権利制限といった二項対立ではないこと、表現の自由の権利の行使において、マイノリティには人種差別を受けない権利があることを認識しなければならない。ヘイトスピーチはマイノリティを沈黙させてしまう可能性がある」と述べました。
また、「表現の自由に対する曖昧な制限が条約によって保護されるマイノリティ集団の権利の制限に、つまり不公正に対する抗議の表現を抑圧する口実に使われてはならない」と強調しました。
ソーンベリーさんは、日本に関して、差別を助長、扇動する宣伝活動の禁止などを定めた第4条(a)(b)項について日本が留保していることについて、人種差別撤廃委員会による勧告と同様に撤回することを促しました。
動画:
(IWJ Independent Web Journal)
【大阪】10.23講演会「世界はヘイトスピーチと闘う
~元国連人種差別撤廃委員ソーンベリーさんを迎えて(動画)
参考:
一般的勧告35「人種主義的ヘイトスピーチと闘う」
人種差別撤廃委員会、ヘイト・スピーチ規制や朝鮮学校への就学支援金など日本に勧告(8月29日)
<講演会の概要>
日時:10月23日(木)午後6時30分~8時45分
場所:エル・おおさか(大阪府立労働センター)7階709号
報告:パトリック・ソーンベリー(Patrick Thornberry)、元国連人種差別撤廃委員会委員
主催:10・23ソーンベリーさん講演実行委員会
(構成:人種差別撤廃NGOネットワーク
反差別国際運動日本委員会(IMADR-JC)、ヒューライツ大阪、
RINK、コリアNGOセンター、神戸外国人救援ネット)