セミナー「カンボジアの女性たち‐経済的自立と配偶者からの暴力(DV)」を開催しました(8月26日)
ヒューライツ大阪は8月26日、カンボジアのパンニャサストラ大学准教授の中川香須美さんを講師に迎えてセミナー「カンボジアの女性たち‐経済的自立と配偶者からの暴力(DV)」を開催しました。進行・コーディネイトは、神戸女学院大学教授の米田眞澄さんが務めました。中川さんの報告概要は以下のとおりです。
カンボジアは近年著しい経済成長を遂げている一方で、人口の8割は農村に住み、多くの農民が高金利で借金をしているといいます。プノンペンなどの都市部へ、またタイをはじめ外国に出稼ぎ行くことは普通になっており、女性を含む多くの人が仕事を求めて外国に行っています。
家父長制が根強いカンボジアでは女性の地位が低く、「女性の法」と呼ばれる女性の行動規範が存在し、従順で夫に尽くす妻となることが求められています。また、とりわけ農村部では貧しい両親を救うために娘が「犠牲」になり「恩返し」することが当然の行為だという考えが残っています。
約25%の女性が配偶者からのDVを経験しているといわれます。しかし、女性の側に、「夫が妻を殴っても仕方がない」という考えが内面化されているとともに、暴力を受けた女性が責められたり、女性が被害を言い出しにくい環境があります。
そうしたなか、カンボジア政府はDV防止や被害者保護、加害者処罰のための法制整備や政策づくりに取り組んでいます。カンボジア王国憲法、女性差別撤廃条約、家庭内暴力と被害者保護法、刑法などに加えて、「女性に対する暴力撲滅のための国家計画」(中川さんは草案者)の実施のために、政府は開発パートナー(海外の援助機関)やNGOと連携しています。
また地方レベルでは、県・市・区の議会内に「女性と子ども委員会」が設置され、DVをはじめとする女性に対する暴力に迅速に対応できるようシステムづくりをしています。今後は、女性や子どもに対する暴力は人権侵害で犯罪であることを人々が理解するよう啓発活動を行うこと、また同じ家庭で繰り返しDVが起きていることから、男性が暴力をやめるようなプログラムを実施するなど多くの課題に取り組む必要があるといいます。