ヒューライツ大阪は、12月3日、異文化コミュニケーション・トレーナーの富岡美知子さんを招いて、スポーツを切り口にしたヘイトスピーチを考えるワークショップを開催しました。これは、ヒューライツ大阪が企画協力した『地球市民の人権教育:15歳からのレッスンプラン』(解放出版社 2015)に掲載されているアクティビティ「差別をキックアウト!-フェアプレーのルールを社会へ広げよう」をベースに、富岡さん流に社会の主流を占める多数派(マジョリティ)の人たちが自分のこととして考えてもらうためにアレンジしたものです。
この本の編著者でもある阿久澤麻理子・ヒューライツ大阪所長代理がこの学習会の趣旨を述べました。2016年5月に「ヘイトスピーチ解消法」が制定されましたが、ヘイトスピーチ禁止・罰則を定めたものではなく、教育・啓発を通じての予防に力点が置かれており、そのため、反ヘイトスピーチや反人種差別・民族差別を学ぶ教材や教案の積極的な開発が必要であること、特に、継続して拡散しているネットを通じてのヘイトスピーチに子どもたちが簡単にアクセスし模倣している現状に対し、教育がどんな有効的な取り組みができるのかが問われています。
富岡さんは、ゴムボールを使ってのアイスブレーキングからワークショップを始めました。グループに分かれて、「私とスポーツ」の体験やスポーツにおけるルールや反則を確認し、プロサッカーチームのサポーターが掲げた「JAPANESE ONLY」の事例とそれに課されたペナルティ、Jリーグの取り組みについて議論しました。
次に、ヘイトスピーチの被害者に共感する感受性を高めるためのアクティビティとして、実際のヘイトスピーチの映像や被害者が語る文章を読みました。次に、さらに「自文化への気づきシート」10問に記入し、自分の社会的な立場を考えました。質問は、例えば「自分の民族でない民族のふりをして生きようと思ったことはない」について当てはまるかどうか答えるものです。これは米国で、マジョリティである白人に「白人の特権性」について気づきを促すために開発された教材を参考にして富岡さんが作成したものです。また、国際人権基準として、日本が加盟している人種差別撤廃条約の説明がありました。
最後に、各グループで、ヘイトスピーチに関する問題点を共有し、どんな解決法があるかをまとめて発表しました。当初予定していた2時間半があっという間にすぎ、時間オーバーで終了しましたが、参加者からはこのテーマでの授業を実践するのに情報を探していたが大いに参考になったという声がありました。