セミナー「ダリットとして生きる-インド社会で虐げられてきた人々の声に聴く」を開催しました(11月28日)
公益財団法人アジア保健研修所(AHI)が、インドからNGO「ティルパニ協会」代表のムルガン・カリラトナムさん(通称:カリさん)を日本に招き、各地で開く2017年度巡回交流会「『ダリットとして生きる』~インド社会で虐げられてきた人々の声に聴く」の企画の呼びかけを受け、ヒューライツ大阪は11月28日、ヒューライツ大阪・セミナー室でAHIと共催セミナーを開きました。カリさんは、自分の生い立ち、家族のこと、脆弱な立場にある権利向上の取り組みについて、21人の参加者を前に語りました。概要は以下の通りです。
カリさん(向かって右)と通訳するAHIの中島隆宏さん
脆弱な立場にある人々のための権利に基づいた活動
私は、1958年にインド南部タミルナドゥ州のダリット(被差別カースト)の家庭に生まれました。小学校から高校までのあいだ、学校で高カーストの同級生や教員からひどい差別を受けていました。大学卒業後、ダリットの解放運動に取り組むNGOのスタッフとなりました。1994年、AHIの国際研修に参加し、行政との対応に関して、対峙するあり方から連携してサービスを引き出すあり方に変わりました。また、私はその同じ年に、ティルパニ協会(貧困者のための奉仕協会)を設立し、代表に就きました。
この協会は、ダリットだけでなく、女性、子ども、障害者、先住民族など権利が侵害されやすい立場にある人たちを対象に活動しています。参加型トレーニングの手法を用いて、ダリットが権利意識に目覚め、不公正に対して主体的に行動できるよう支援しています。
その成果として、土地のないダリットの農業労働者が州政府から土地を獲得することができたり、最低賃金法を守らせて所得が向上し、家を建てることができたなど数々の成果をうみだしています。地域社会におけるダリットをはじめとするさまざまなネットワークが生まれています。
非ダリットとダリットがともに活動する際に、あつれきが生じることもあります。それでも、粘り強い話し合いを通じて、わかりあうよう努めています。
私の妻は高カースト出身です。結婚するときは、彼女の両親から強い反対にあいました。娘が二人います。大学でコンピューターを学んだ娘が私の活動を手伝ってくれています。残念なことに、妻の実家とはいまも交流がありません。
現在でも、ダリットとの結婚はとりわけ高カーストの両親から強く反対されています。それでも、孫ができると孫の顔見たさに歩み寄りが始まることもあります。結婚差別をなくすこともダリット解放にとって大切なことなのです。