セミナー「フィンランドの移民受け入れ」を開催しました(1/19)
ヒューライツ大阪は1月19日、NPO法人おおさかこども多文化センターとの共催で、亀谷優子さんを講師に迎えて、セミナー「フィンランドの移民受け入れ~これから日本が歩む道をさぐる」を開催しました。
亀谷さんは日本、スウェーデン、フィンランドで社会福祉を学び、2017年まで約18年間、フィンランドに滞在していました。2006年からNGOやヘルシンキ市福祉課で移民支援のプロジェクトに携わった後、「フィンランド難民支援(Suomen Pakolaisapu)」というNGOで約7年間、ピアサポート(同様の経験をした人同士が支えあう活動)を通じた多文化共生事業のチームリーダーを務めていました。
亀谷さんによると、フィンランドは日本と同様に少子高齢化をたどっているものの、人口は増加傾向にあります。その背景には移民・難民の受け入れ増があるといいます。2000年頃には1.5%程度だった在住外国人は、2017年には7%まで増加しました。
フィンランド政府は、移民の社会統合政策を実施しており、移民本人と相談しながら2~3年間の計画を立て、生活支援、語学教育(公用語であるフィンランド語、あるいはスウェーデン語)、就労支援、健康管理などのプログラムを実施しています。
移民の子どもの教育に関しては、義務教育課程(日本と同じ6・3制)において、最初の1~2年間は移民対象のクラスに入り、フィンランド語、母語、宗教あるいは道徳、算数などを学習したうえで一般のクラスに編入するという受け入れ態勢をとっています。
義務教育後の高校、もしくは職業学校への進学前に、移民向けの予備校もあります。移民の子どもの多くは職業学校を経て就職していますが、大学に進学する子も増えているといいます。これには、近年の就職難も理由のひとつだそうです。
政府は、移民の社会統合の一環として、NGOなどに業務委託し、語学や職業教育、精神面の支援、宿題の手助けなど児童や青少年の学習支援、通訳付きの保護者へのさまざまな説明会の開催などの事業を行っています。移民へのサービスに関わる人に対する報酬についても政府は予算化しており、日本のような無償ボランティアに頼るという状況とは異なるそうです。
一方、支援プログラムに関する情報はインターネットを通じて知ることができるものがほとんどで、制度を理解することが難しいことや、子どもの学校での服装や給食のメニュー、礼拝などに関して配慮が十分でないといった課題もあるとのことです。
フィンランドは、憲法16条で、「何人も、無償の基礎教育に対する権利を有する」と定めており、基礎教育法25条 で「通常フィンランドに居住する子どもは学習義務を負う」、と国籍に関わらず学習義務を規定しています。
セミナーには、外国にルーツをもつ子どもの教育支援に地域で関わっている人、学校の教職員、研究者など35人が参加しました。
<参考>
フィンランドの難民受け入れに学ぶ 亀谷優子
(国際人権ひろば No.140・2018年7月)