2018年8月、ジュネーブの国連人種差別撤廃委員会は、日本の条約実施に関する報告審査を行った。そのなかで、「コリアンの生徒たちが差別のない平等な教育機会を持つことを確保するために、高校就学支援金制度の支援金支給において『朝鮮学校』が不公平な取扱いをされないことを締約国が確保すべき」とする勧告を公表した。つまり、朝鮮学校を無償化の対象から外すという日本政府の政策を改めるよう求めたのだ。
今回製作された映画「アイたちの学校」は、日本政府の差別的な政策に抗して、朝鮮学校がどのようにして続けられているかを映像によって表現しようとしたものである。
かつて日本の植民地政策によって朝鮮語の教育が禁止され、日本語が強制された歴史を持つコリアンは、戦後の日本で、子どもたちが民族の言葉と文化を学ぶ場として朝鮮学校を作った。
ところが、1948年、日本政府と占領軍は朝鮮学校を閉鎖しようとし、関西で大きな抗議行動が起きた。今回、発掘されたニュース映画によると、大阪府庁前に何万もの人々が集まり、子どもたちもデモをしている。そして消防隊がホースで人々に水をかけ、警察官が拳銃を水平に構えて登場する。記録によると20発の実弾が撃たれ、16歳の金太一という少年が頭を撃たれて死亡したほか、3名が銃槍を負った。これらの事実は当時、新聞もラジもほとんど伝えなかったのである。
映画はこの闘争に参加した人にインタビューし、証言と映像を組み合わせる。また高校無償化の対象から朝鮮学校を外した日本政府のやり方を時系列で検証していく。無償化の制度設計に関わった元文部省次官の前川喜平さんは、インタビューでこれを「官製ヘイト」と指摘する。
この映画はドキュメンタリーとしては珍しく、大阪の上映館では初日から立ち見が出るほどの盛況になり、1週間の上映が4週間に延長された。上映運動は全国各地で始まっている。
小山 帥人(ジャーナリスト、ヒューライツ大阪理事)
「アイたちの学校」/ドキュメンタリー99分/ 2019年製作/ 監督・高賛侑/
撮影・小山帥人、松林展也、高賛侑/ 編集・黒瀬政男
上映スケジュール:
第七藝術劇場 2月15日まで(http://www.nanagei.com/movie/data/1296.html)
京都シネマ 3月2日〜29日(http://www.kyotocinema.jp/)