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フィリピンからサトウキビ労働者組合の活動家来日-超法規的殺害を報告(5/11、大阪)

 フィリピンでは労働者や農民、地域住民の権利を守るために活動する人たちが、裁判に基づかずに処刑されるという「超法規的殺害」が起きています。そのような事態を受けて、日本国際法律家協会(JALISA)をはじめ市民有志がSTOP THE ATTACKS実行委員会を組織し、同国中部のネグロス島から全国サトウキビ労働者組合(NFSW)事務局長のジョン・ミルトン・ロサンデ(John Milton Lozande)さんを日本に招いて、大阪や東京、神奈川で報告会を開催しています。
 その一環として5月11日、日本国際法律家協会は大阪で上映会&講演会「フィリピン・ネグロスから命の危険に屈せず抗い続ける労働者たちの現実」を開催し、ヒューライツ大阪が後援しました。参加者は約30人でした。
 日本国際法律家協会は、2016年と2019年3月にフィリピン現地調査を実施し、被害者の遺族など関係者から聞きとり、2019年4月にドゥテルデ大統領や国防大臣、警察長官などに抗議声明を送付しています。
 ロサンデさんの報告概要は以下のとおりです。
 
大農園制度のもとでの奴隷的賃金のサトウキビ労働者
 フィリピンには地主のもとで働くサトウキビ労働者が70~78万人おり、うちネグロス島に31~34万人いる。農園の大半は、一握りの大地主が所有しており、サトウキビ労働者は奴隷的賃金を強いられている。5人家族の場合、少なくとも1日約900ペソ(1,800円)は必要であるにもかかわらず、ネグロスの農業労働者の法定最低賃金は295ペソ(590円)にすぎない。加えて、賃金は、しばしば出来高払い(パッキャオ制度)とされており、さらに低い賃金に押さえ込まれている。サトウキビの作付けから成長するまであいだの毎年5月から9月にかけては農閑期で仕事がなく、「死の季節」と言われている。
 サトウキビの大農園制度は、スペイン植民地時代以来続いていること。コラソン・アキノ大統領政権下の1988年以来、農地改革法が施行されているが成功していない。
 
相次ぐ超法規的殺害
 そのような現実に対して、サトウキビ労働者たちは声をあげて権利を主張しているが、警察や国軍から脅されるなどの弾圧を受けたり、反政府ゲリラだとして罪をでっちあげられたりしている。さらに、労働組合の活動家などが覆面をした何者かに銃殺される事件が相次いでいるのである。
2018年10月20日、サトウキビ労働組合のメンバー9名が殺害され、11月6日にその事件を追及する弁護士が殺された。12月27日、113人もの活動家に対する捜索令状が警察から発行され、そのうち6人が殺され、31人が逮捕された。私もリストアップされているひとりだ。さらに、2019年3月30日、14人が殺害され、6人が逮捕されている。
 2016年にドゥテルテ政権が発足して以来 麻薬犯罪の容疑者とされる2万人以上が殺害されている。人権活動家は、フィリピン全体で205人が殺害されているが、うちネグロス島だけで65人も殺害されている。
 
サトウキビ労働者組合の要求
 サトウキビ労働者組合は、労働者の賃金が上がり、安全で人間らしい労働に就けることを政府に求めている。そして真の農地改革が推進され、農業労働者が土地所有の権利を維持できるよう求めている。また、政府が軍や警察、およびその関係者による迫害を止めさせるとともに、長年にわたり対決しているフィリピン共産党(CPP)-新人民軍(NPA)をはじめとする民族民主戦線(NDF)との和平交渉を進めることを望んでいる。

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