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共催セミナー「コロナとの共生時代の到来をうけて-あらためてSDGs実施指針改定版を読みなおす」を開催しました(8/29)

 国際開発学会の社会連携委員会は8月29日、関西NGO協議会とヒューライツ大阪との共催でセミナー「コロナとの共生時代の到来をうけて-あらためてSDGs実施指針改定版を読みなおす」を、大阪大谷大学ハルカスキャンパスでZoom を併用して開催しました。
 新型コロナウイルス感染症が拡大するいま、SDGs(持続可能な開発目標)を基盤とする対応が重要であるという認識のもと、日本政府の「SDGs実施指針」をとりあげ、①その改定プロセスや内容上の特徴を整理し、②コロナ禍の状況を踏まえ、「SDGs実施指針改定版」をめぐる課題について考える目的で実施しました。
 SDGs実施指針とは、2016年5月に設置されたSDGs推進本部(首相が本部長で、全閣僚が構成員)が策定するSDGsを達成するための日本の中長期的国家戦略。2016年12月に策定され、2019年12月に改定されています。適用期間は4年間。実施指針の下に、「Society 5.0の推進」「地方創生」「次世代・女性のエンパワメント」を3本柱とする「SDGsアクションプラン」が毎年作られています。
 
 報告者の「SDGs市民社会ネットワーク」政策担当顧問の稲場雅紀さんは、2019年のSDGs実施指針の改定に市民社会が積極的に関与し、ジェンダーなどで成果を生んだと説明しました。コロナ対策については、SDGsの視点が欠け、透明性・公開性・参加型意思決定などの原則が果たされなかったと指摘。「感染するのは気が緩んでいるからだ」といったメッセージが政府から不用意に出て、感染者が差別と排除の対象となったと述べました。さらに、「アフター・コロナ」に向けて科学技術優先の方向が打ち出され、「ひと中心」の原則が揺らいでいると懸念を表明しました。
 
 続いて報告した関西NGO協議会の代表理事で、ヒューライツ大阪所長の三輪敦子は、SDGs実施指針改訂版の成果と課題について、パンデミックとSDGs、国内実施体制の諸課題などについて報告しました。
 実施指針改訂版に関して、8つの優先課題には従来の「1 あらゆる人々の活躍の推進」から「1 あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現」とジェンダー平等が加えられたと説明しました。これは、ジェンダー平等の推進を求める市民社会からたくさんのパブコメが届いた成果だといいます。また、「ジェンダー平等の実現及びジェンダーの視点の主流化は、分野横断的な価値として SDGs の全てのゴールの実現に不可欠なもの」と明記されたと話しました
 しかし、ジェンダー平等が分野横断的課題であるという認識は具体化されておらず、複合的な差別や不平等の問題は扱われていない、と三輪所長は指摘しました。
 SDGsは、「誰ひとり取り残さない」ことを目指しているけれども、コロナ禍の対策のひとつ「特別定額給付金」において世帯主が代表で受給するという方法がとられたため、DVなどで避難している女性や子どもが取り残されてしまうような制度設計であったと述べました。
 三輪所長は、持続可能なコロナ後を創るために、何が必要なのかという知見と情報を、世界各地の試みや好事例から学ぶ必要があると語りました。
 
セミナーの概要
 
【日時】8月29日(土)13:00~15:00 (開場 12:30)
【場所】対面型会場(大阪大谷大学 ハルカスキャンパス)とZoomのハイブリッド型
【主催】国際開発学会 社会連携委員会
【共催】関西NGO協議会、ヒューライツ大阪
【後援】SDGs市民社会ネットワーク、JICA関西、社会福祉法人大阪ボランティア協会
【協力】関西SDGsプラットフォーム
 
<プログラム>
・SDGs実施指針改定版の概要と変更のポイント
国際開発学会社会連携委員会 幹事/大阪大谷大学 教授 岡島克樹
・SDGs実施指針改定版の読み方(1)
SDGs市民社会ネットワーク 政策担当顧問 稲場雅紀
・SDGs実施指針改定版の読み方(2)
ヒューライツ大阪 所長・関西NGO協議会 代表理事 三輪敦子
 ・質疑応答
・閉会挨拶 国際開発学会 理事・聖心女子大学 教授 大橋正明
 
会場での報告のもよう.JPG   会場のようす。向かって左から岡島克樹、大橋正明、稲場雅紀、三輪敦子の各氏