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第6回じんけんカタリバオンラインセミナー災害と人権①「最後のひとりまで~被災地KOBEの経験をコロナ後につなぐ~」を開催しました(10/24)

 これまでに様々な災害を経験してきた私たちですが、新型コロナウイルス感染症という新たな形での危機を経験しています。この状況を受け、災害という非常事態にこそ一人ひとりが人権の視点を持つことの大切さを皆さんと分かち合いたいと思い、「災害と人権」というテーマでセミナーを2回、企画しました。
 第1回目は、CODE海外災害援助市民センター(事務局:神戸)事務局長の吉椿雅道さんを迎えて「最後のひとりまで~被災地KOBEの経験をコロナ後につなぐ~」と題してお話をしていただきました。

 吉椿さんが事務局長を務めるCODEは、1995年の阪神・淡路大震災をきっかけとして設立されましした。世界約70か国から受けた支援へのお返しをしたいという思いで、同年5月にロシアのサハリンで起きた地震から救援活動を開始し、これまでに世界の35の国と地域で計63回の復興支援を行ってきました。CODEの活動は「困っている時はお互い様 支え合い 学び合い 最後のひとりまで」を理念とし、緊急支援にとどまらず、その後の生活再建など復興に至る一連のプロセスを支援してきました。NGO(非政府組織)であることにこだわり、政府と一定の距離を置き、国のお金を極力使わず活動資金のほとんどを寄付金でまかなっています。国からの要請の有無に関係なく、支援が必要と判断すれば実施するということでもあります。

 今回の新型コロナウイルス感染症拡大のなか、中国の武漢では、厳しいロックダウンのため町に入れるのは医療従事者と政府関係者だけでした。CODEは四川のNGOと協力し、医療従事者からの情報をもとに、2020年2月にプロジェクトを立ち上げ、武漢の人たちによるボランティア活動を外部からオンラインを使って支えました。この経験から、災害支援についての民間の経験や取り組みを共有し、それぞれの現場に活かしていくことを目的とした国際アライアンス「IACCR」(International Alliance for COVID-19 Community Response)を設立しました。現在、14の国と地域のNGOや研究者などのメンバーがネットワークして国際会議を開催しています。

 吉椿さんはコロナ禍でも各国で気候災害が発生しているが、これまでの経験を踏まえ、今後はそうした自然災害に対しても感染症ありきで考える必要があると話しました。また、NGOと国際赤十字などによって作られた人道支援の国際基準であるスフィア基準に触れ、スフィア基準の本来の基本原理は ①尊厳ある生活の権利 ②人道援助を受ける権利 ③保護と安全への権利の保障であり人権を保護するものなのに、避難所の広さやトイレの数など設備の設置基準としてのみ理解されている傾向に懸念を表明しました。
 災害はもともとあったその地域の問題を露呈させるが、コロナ禍でも同じことが言えると語り、25年前の阪神・淡路大震災後に出された神戸宣言にある「被災者の私たちが自ら語りだす、学ぶ・つながる・作る・決める行動を積み重ね新しい社会システムを創造していく力を養っていく」というメッセージはコロナ禍でも大切な理念であることを強調しました。そして、社会の中で取りこぼされてしまっている「最後のひとりまでを救う」ことを追求することが人権を保護していくことにつながっていくと話し、セミナーを終えました。

吉椿 雅道さん
CODE海外災害援助市民センター事務局長