これまでに様々な災害を経験した私たちですが、新型コロナウイルス感染症という新たな形での危機を経験しています。この状況を受け、災害という非常事態にこそ一人ひとり
が人権の視点をもつことの大切さを皆さんと分かち合いたいと思い「災害と人権」というテーマで企画をしたセミナーの2回目です。
今回は、災害に見舞われても自分たちで支え合いながら立ち上がれ、安心して暮らすことができる地域社会づくりを目的に活動をしているNPO法人とれじゃーBOXの理事長で防災士の大槻由美さんを迎え、「ジェンダーの視点で見る防災」と題して話をしていただきました。
大槻さんは、防災士の資格を取得後、コミュニティー防災に取り組み、福祉と防災を融合させた災害に強いまちづくり支援活動を展開してきた経験から、災害は「いつでも どこでも 誰に対しても」起こり日常の延長線上にくるものなので、「もしも」のために毎日の暮らしから少しづつ、いつも備えることが大切だと説明しました。
東日本大震災を振り返ると、避難所運営のリーダーは多くの場合が、男性でした。避難所では女性という理由で、女性が炊き出しをまかされがちです。
東日本大震災後の支援にあたったさまざまな団体の経験を集めた冊子「こんな事例がほしかった!~現場に学ぶ、女性と多様なニーズに配慮した避難支援事例」を参考に、長期に渡る1日3回の炊き出しは女性への負担が大きくなるため、改善策としてローテーション方式を取り入れた女性リーダーの取組みが紹介されました。
また、泥かきなどのまちの復興作業には報酬が支払われていた一方で、炊き出しは完全なボランティアで行われていました。女性の労働が正当に評価されていないことの現れと言えるでしょう。
避難所運営にかかせないトイレの設置については、被災地などの支援の現場で守るべき国際最低基準である、スフィア基準(正式名称:人道憲章と人道支援における最低基準)に基づいて、トイレ設置の基準(20人に1基必要、男性1基に対して女性は3基、男女兼用はしない等)を守り、みんなが安全に使用するために「死角をなくすためのあかりの確保」と「人目につく場所への設置」が大切です。
避難所における炊き出しについての改善策を考えても、女性リーダーが果たせる役割が大きいことがよくわかります。また、女性が現状の困り事などを発信できる(声を出せる)、また改善策や工夫を発案・展開できる(声を上げられる)環境が重要です。防災に向けた取り組みについても、女性の声が反映され、女性がリーダーシップを発揮することの大切さを再認識したセミナーになりました。
NPO法人とれじゃーBOX理事長 大槻 由美さん