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国際人権を考えるつどい 『世界と私をつなぐキーワード』 報告

 2001年12月12日(水)、クレオ大阪中央で、大阪府・大阪市・ヒューライツ大阪の三者が主催し、外務省後援による、「国際人権を考えるつどい~世界と私をつなぐキーワード」を開催しました。世界人権宣言の各条文と反人種主義・差別撤廃世界会議に関するパネル展示をあわせて行いました。参加者は650名を超え、アンケートによると50歳代を中心に10代から70代以上まで幅広い年齢層の方が参加されました。概要をお伝えします。

1)文化イベント

長城楽団が琵琶・揚琴・二胡による中国民族音楽を演奏しました。

2)世界会議レポート

・第2回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議(横浜)について

 外務省人権人道課首席事務官の久野和博さんより、児童の商業的性的搾取の問題は、社会的な認識と深く関わっており、複雑で困難な課題であること、また、それだからこそ、第1回に続き、政府、ユニセフ、エクパット、児童の権利条約NGOグループが立場を越えて一つになり、今回の世界会議が開催される、と説明がありました。

・反人種主義・差別撤廃世界会議(ダーバン)について

 ヒューライツ大阪の川本和弘が現地で撮影したスライドを使用しながら、報告しました。

3)講演会

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 「21世紀・人権文化豊かな社会をめざして-人権の主体者として考え、行動する」と題して、弁護士の中坊公平さんに講演していただきました。

(講演内容の要旨)

 20世紀の日本は、戦前、戦後ともに「追いつけ、追い抜け」で、急成長を遂げバブルを極め、そして崩壊し混迷する、という過程をたどっている。これは、状況の変化や価値基準の変化に気づかず進んでしまうことに問題があり、また、戦後、国民主権となったが、今なお、国民は統治の主体者としての意識に乏しく、自立していないことにも問題があると考えている。

 今日の資本主義社会におけるグローバリズムの自由競争の中では、最高の価値判断の基準は効率性と合理性であり、もう一つが科学文明であった。日本もこの流れで進んできたが、今や見直すべきときに至っており、「人権とは何か」が改めて、問い直されている。本来、人権の「権」は正義を意味するものであって、利益を意味する「権利」ではなく、「権理」と書くべきものだと思っている。「理」とは物事の最高の価値判断、善悪の判断基準のことである。社会のあらゆることがこの人権の「理」の基準で割れば割れる、人権とはそういう広範囲なものであると考えている。

 これまでの日本人は、何かあれば、「どうするのか」を性急に求めてきた。しかし、価値判断の基準が変わろうとしているこれからは、「なぜこうなったのか」を考えなくてはならない。「なぜだ」と考えるときの価値判断の基準には、効率性や科学の視点からだけでなく、高い理念である人権の「権理」の視点が重要である。そして、理念先行型で、人権が尊重される社会のあるべき姿を描き、それが実現しない原因をどう直してゆくのかを考えてゆく。

 また、「なぜ」を考えるときには、現場を直視しなくてはいけない。弁護士となり、森永ミルク中毒事件をはじめ、実際の現場に行き、五官で感じて、「なぜこうなったのか」を考えることがいかに重要かを知った。各人が「なぜだ」と考え、原因を突き詰め、どのようにしてゆくのかを考えることが、自立するための考え方の第一歩だと思う。 

 社会の現象というのは結果であり、原因がある。制度や運営に本質的な問題があるのではなく、各人の意識の中にこそ問題がある。現在の閉塞状態はエゴの充満によるものではないだろうか。この社会を立て直すには、官を意味するタテの公ではなく、みんなのために何ができるかというヨコの公を考えることだと思う。一人でできることには限りがあるが、同時に一人ひとりが灯をともせば、最澄の言葉「一灯照隅」「万灯照国」にあるように、日本は明るくなると思う。

4)座談会

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「世界の中の一人、と感じるとき」をテーマに、3名のゲストを迎えて行いました。

 司会、川島慶雄(ヒューライツ大阪所長)が、エレノア・ルーズベルトの言葉「いったい国際人権とはどこから始まるのでしょうか。小さな場所からです。家の近くの小さくて、世界地図では見えない場所から始まるんです」を引用し、国際人権との関わりについてゲストに語っていただきました。

・小林義彦さん((社)関西経済連合会)・・・企業の社会的責任についての調査・研究からみると、倫理綱領策定など社内体制の整備とともに、良い企業を社会が応援することや消費者・投資家・市民・企業の価値観の共有が重要である。法律だけでは社会は変わらない。社会的責任投資などの取り組みが始まっているが、まず、自分自身から変わることが必要である。

・松尾カニタさん(FM CO・CO・LO)・・・今後、日本が多文化・多民族共生社会となることが予想され、法律・社会整備とともに、異文化を認め、コミュニケーションに努力するなど各人の意識の変化が必要である。また、外国人をゲストでなくホストとして受け入れる社会となることが、21世紀の日本にとって重要である。

・米田真澄さん((財)世界人権問題研究センター)・・・日本社会も、国際人権規約や難民条約の批准によって外国人に対する社会保障が進み、また、女性差別撤廃条約によって国籍法改正や男女雇用機会均等法制定へとつながった。各自が社会の常識を国際的な人権基準に照らして判断し、行動し、新しい価値観を築くことにより、制度や法律が変わってゆく。


(この文章は和文ニュースレター第41号からの抜粋です)