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7月31日(水) 人権委員会(CHR)

Commission of Human Rights ( Komisyon ng Karapatang Pantao )

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迎えていただいた人権委員会の委員
ピュアリフィケーション・ケソンビン委員長(Purification V. Quisumbing)
エリヒオ・マリャリ委員(Comm.EligioP.Mallari)
マリク・マランダン委員(Comm. Malik G. Marandang)
ドミナドール・カランバ委員(Comm. Dominador N.Calamba)

●ケソンビン委員長紹介:
  • 委員会のケソンビン委員長は3代目。1代目(男性、すでに他界)、2代目(女性)に次ぐ。偶然にも、2日前に就任宣誓をした直後である。
  • フィリピン大学(UP)ロースクールの教員時代には「法を民衆化する(popularizing law)」のプログラムを担当し、その後、ユニセフの法担当官、国連人権委員会の議長を務め、再びUPロースクールの教授を経て、人権委員会の委員に任命され、2日前に現職となったばかり。
●委員会制作の啓発ビデオ 「あなたの人権・私の責任」(Your Rights, My Responsibility)を鑑賞
  • ビデオは4部構成からなる。①人権状況 ②保障されている権利 ③なぜこのような権利侵害がおきるのかについての分析 ④行動にむけて
  • (内容)国内法では憲法、国際的には世界人権宣言などによって権利が位置付けられ保障されているにもかかわらず、そうした知識がないために、人権侵害を受けている人びとがいる。たとえばニーナはその一例である。彼女は父が失踪後、母が収監され10年間を過ごした。ニーナが18歳のときようやく母親が解放された。母親になぜこのようなことになったのかと尋ねたところ事情は以下のとおりであった。
  • 農業を営んでいた父のもとに、ある日書類を持った人が訪れ、所有権がないという理由で立ち退きを求めた。これに反対した父は地主と争いになり、武装ゲリラ新人民軍(NPA)だという理由をつけられ拷問され、その後失踪したことがわかった。
    以後、母は子どもを養うために工場労働者となり一日10時間の労働に従事するが、労働条件は劣悪でニーナが学校で必要なものすら買うことができなかった。賃上げを求める労働争議に参加したことで、母も逮捕されてしまった。こうしたケースだけでなく、児童労働のケース、農民デモに発砲し、多くの死傷者が出たメンジョーラ事件、外国人労働者の問題であるコンテンプラシオン事件、先住民の先祖伝来の土地に対する侵害、強制立ち退き、開発プロジェクトによる人権侵害などが存在する。
    国連開発計画では、貧困も人権侵害であると定義していますが、人権を擁護する役割を果たす人はいない。健康に暮らす権利、天然資源や健康に対する権利、労働の権利、組合活動に参加する権利、社会保障、休養しレジャーを楽しむ権利、移転や出国をすること、結婚すること、親になること、法の前で人間として認められ評価されること、教育や文化的生活を送ることも権利である。CHRは政府に対する「番犬」として法が遵守されているかを監視し、人々に対しては自分の権利について知るよう教育している。
●CHRの設置と実績
  • CHRは1987年の憲法によって設置を規定された憲法上の機関である。マルコス大統領の戒厳令時代の経験から、政府や政府役人による人権侵害を繰り返さないために設立された。
  • きょう時点のコミッショナーは4人だが、本来の定数は委員長1名を含む5人。訪問時は、1名空席であった(03年初頭にもう1名が任命された)。
    大統領から任命される。任期は7年。大統領から任命された委員と委員長には、事務局員の採用権、リジョナル・オフィス(地方事務所)の所長以下の使命権限がある。
  • 政府から独立した人権機関であり、政治力からは影響を受けず、財政的な自治もある。
  • 役割は大別すると調査と人権促進活動である。①申し立ての有無にかかわらず市民的・政治的権利に関わる全ての人権侵害の調査をすること。②教育と情報提供を通して人権の伸長を図る。すべてのセクターに彼らの権利について伝える。③すべての拘禁施設の人権状況を査察する。④法律扶助(国内/国外)。⑤政府が憲法や、国際人権条約を遵守しているかを監視する。
  • 教育省、NGOと協力して学校向けのカリキュラム開発も行った。
●バランガイ人権行動センター(BHRAC)
  • 全国で42,000以上あるバランガイのうち30%をすでに組織化し、バランガイ人権行動オフィサー(BHRAO)を置いている。オフィサーはバランガイでの選挙で選出される。
  • バランガイ長(キャプテン)などは政治に直結しているので、オフィサーになれない。人権委員会が、憲法に根拠をもつ政府から独立した組織であるという理由からである。
  • すべてのバランガイにおいて人権侵害の監視をするために、センター設置をめざしている。数は毎月拡大している。またセンターは教育と情報提供の役割も担っている。
●人権委員会地方事務所の活動
  • リジョナル・オフィス(地方事務所)を持ち、地方でも本部と同様の活動を行っている。調査と人権伸長に関わる仕事を行い,調査した結果を報告する。
  • リジョナル・オフィスには3人の法律家、10人の調査官、2人の教育情報官、5人の総務スタッフがいる。
  • 申し立てに対する調査、軍隊、警察など法の執行に関わる機関を監視し、また教育情報提供を行っている。軍隊や警察がなぜ権利侵害をするのかというと、人権とは何かを知らないから。だから自分の権利を知ることは大切である。また彼らの人権侵害についての記録を行っている。彼らは昇進の際に、CHRの認証を求められており、人権侵害をしていれば昇進ができないシステムになっている。
  • 調査や教育プログラムでもNGOをパートナーとし、協力している。
  • 拘禁施設の訪問:拘禁施設での「刑罰」は、本来リハビリのためであるはずなのに、非人道的なものが多い。混雑しすぎた施設、不十分な食料、看守による虐待などにも目を光らせている。
  • HRACのプログラムの実施も、リジョナル・オフィスの役割である。まず、BHRAOがバランガイ議会で任命されると、CHRでは、実務に就く前のオリエンテーション・セミナーを実施する。
●フィリピン人権プラン
  • フィリピンでは1998-2007年を「フィリピン人権の10年」とすることを、大統領宣言によって定めている。そこでは特定のセクター、とりわけ周辺化されたセクターの権利を監視しサポートすることがうたわれている。それらは女性、子ども、労働者、海外移住労働者、先住民族、高齢者、被拘禁者などである。
●BHRAOなどに、法的な権利を分かりやすく伝えるために、どのようなことを行っているか
  • オフィサーに任命される人は必ずしも高い教育を受けているとは限らない。オリエンテーションでは、法は英語で書かれているため土地の言語を使う。できるだけ法律用語を単純化し、一般人(レイマン)のスタイルで伝えようとしている。
●日本ではどのような人権教育が行われているのか、と逆の質問が委員長からあった(ケソンビン委員長は国連人権委員会の議長時代に、日本に本部を持つ国際NGO反差別国際運動(IMADR)の紹介で大阪の被差別部落の諸問題について触れた経験がある)
→思いやりや優しさなど、抽象的な認識が多く、憲法や国際法が生活とどう関連するかという視点が少ない。
→同和教育、在日コリアンについての学習の事例が報告された。
●人権委員会の独立性とは
  • 国内人権機関は、国連パリ原則にのっとり独立性が重要。そこで政治的権力が介入できないよう以下のことを行っている。
    ① 委員長・委員は大統領から任命されるが、指名は人権団体が行っている。
    ② 大統領が委員を任命する際に、国会の許可を得なくてもよい。
    ③ 予算は不足しているものの年間2億1千万ペソ。これには15のリジョナル・オフィス分も含まれる。財務省が予算を出すが、使途はCHRで決定する権限がある。また不足分は外国からの援助、たとえば国連機関(ユニセフの子どもと女性のプロジェクト、国連開発計画ではCHRの効果の評価、国連人権高等弁務官事務所)、また、トレーニングに対してはカナダ国際開発庁(CIDA)やスウェーデンが支援している。日本の国際協力事業団(JICA)による協力についても可能性を探りたい。
●ケソンビン委員長から:
  • 国内人権機関の連合体である「アジア・太平洋国内人権機関フォーラム」には残念ながら日本が入っていない。現在9組織が加わっているが、日本も早急に人権委員会を創設し、これに加盟し組織を強化してほしい。
他の同席した担当官:
Ms.Ana Elzy E. Ofreno 教育研修担当
Attn.JacquelineV. Mejia 事務局長
そのほか、広報担当官らが同席