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7月31日(水) パキサマ(PAKISAMA=全国農民組合連盟)

イベット・ロペス(女性、コーディネーター)

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●ロペスさん自己紹介
  • 私自身も以前は農民だった。法律政策・政策提言プログラム(Legal Policy and Advocacy Program)を担当。
●組織体制
  • 傘下の組合の連合体という形式をとる。1986年に零細農民、土地なし農民の組織として発足。現在は小農民、漁民、農村女性など29の町・州レベルで活動する草の根組織、協同組合、農地改革のための組織などで成り立つ。これらの組織は25の州にわたって存在する。
  • 以前はフィルドラ(Phildharra)というNGOネットワークの下にあったが、その中で農民組織が連携しパキサマとなった。
  • パキサマは、PO(民衆組織、あるいは草の根組織)であって、NGOではないということに誇りを持っている。社会変革のためには、確固として粘り強く活動するPO、つまり当事者の運動が必要である。
  • 未組織の農民を直接組織することはしていない。パキサマがコミュニティ・トレーニングを行い、それを受けた農民組織・活動家がコミュニティに出かけていき、そこの農民を組織化する。農民が自分自身でやること、それがエンパワメントになるからであり、これが大事である。
  • ジェンダー、持続可能な農業プログラム(有機農業を促進)などを実施。農民だけでなく漁民の組織化も行い、漁業や水産資源についての政策提言も行っている(aquatic reform)
  • 運営は、3年ごとに総会で選ばれた農民のリーダーによって構成されるリーダー機構が行う。この組織が事務局と平行に存在する。
●教育研修活動
  • ジェンダー教育...現在はとりわけジェンダー教育が大切だと認識している。年配の男性が支配する組織を変えるためには、地方の女性農民の教育が不可欠。かつて0%であったところから現在40%まで女性リーダーが育っている。
  • 土地の権利についての教育、スキルを高める教育(組織化、リーダーシップ)などを実施。
     農民が無知によって権利を侵害されたり、提訴されるのを避ける。
  • パラリーガル(裸足の法律家)養成とかれらのサポート
     弁護士が足りないうえ、農地改革に関心のある法律家が少ない。また、いたとしてもペイできない。そこで、オルタナティブな法律家たちの助けを借りてパラリーガル教育を実施。オルタナティブな法律家というのは、一般の弁護士と違い、農民のことを理解し、彼らのために働くとともに、地主から買収されない弁護士のこと。
     農民自らが農地改革の知識と、法的なプロセス(どうしたら土地を獲得できるか)について学習する。
     しかし農民の大半は小学校までで、高卒者は少し、そしてカレッジ卒業はごくわずかである。かれらが法廷にたって弁護活動をできるようになるためにスキルや書類作成などのトレーニングを実施する。
  • エクストラ・リーガル・アクティビティ
     訴訟以外の方法についても教育する。集会、キャンペーン、ピケ、ハンガーストライキなどのキャンペーン・マネージメントのためのトレーニングには、①理論的学習、②実践的学習があり、前者には短期~長期の目的の明確化とリスクの予想、後者には効果的にメッセージを伝える方法についての学習などが含まれる。
  • popularizing law project
     農民のわかる言葉で伝える。農地改革に関して厚い文書が届くたびに、これらを単純化し、農民にわかりやすい言葉で伝える。農民にわかりやすい教材、まんが、詩、ゲーム、歌などを教材にする。
     法を単純化した教材をマニュアル化し、トレーニングのあとも現場で使えるようにする。
  • ポスト・トレーニング
     リーガル・クリニックの実施。パラリーガルのコースの修了者を対象に、オールタナティブな弁護士といっしょに、特定のケースについて話し合い、戦略を立てるなどする。
●法律に関わる政策提言(Legal political advocacy)
  • 法律扶助・相談(パラリーガル養成とかれらによる対応)
  • 土地に関するケースの記録・書類作成。
  • キャンペーン...2008年に包括的農地改革プログラム(CARP)が失効するが、十分に農地改革が進んでいない。政府が十分な予算を組んでいない(政府が土地を地主から買い上げるなどの予算。農民は分与された土地の対価を支払わなければならないことが一因であり、予算を増やすよう交渉)。
  • 政治的な力をもつ地主の中には、政府に対して、自分の土地を農地改革から免除するよう交渉したり、私兵をもって立ち入りを阻止するケースもある、従って農民は武器をとり自ら戦うか、法的プロセスを経ずに自力救済(土地占拠)するケースもある。
●ネットワーク (linkage, networking)
  • 同様の経験をしている農民達を集め、全国レベルの集会では交流を行い、経験をシェアしている。こうした場には、関係省庁の役人にも出席を求めている。
●メディア・ワーク

●農地改革の対象地には二種類ある
公有地 →環境天然資源省(DENR)の管轄
私有地 →農地改革省(DAR)の管轄
 ほとんどの農民が耕しているのは私有地。パキサマが関わるのはたいてい私有地なので、とくに私有地の農地改革の進行状況についてモニターすることに焦点をあてている。
 私有地については
 ① 政府の強制接収...地主の同意がいらない。ただし政府の政治的意思と地主の協力がいる。
 ② ボランタリー・スキーム
の2つがある。①については政治力の強い地主の影響で難しい。たとえばネグロス島において、フィリピンきっての大地主ダンディン・コファンコが最大の地主であり、広大なアシエンダ(農園)を持つ。ネグロス島が農地改革のもっとも進まない場所であるのはそのためだ。

●農地改革をさまたげるもの
  • 予算不足:対象地は多いのに予算があまりに少ない。
  • 政府の農地改革担当官に有能なスタッフがいない。したがって、遅い。長年にわたり農地改革を求めている間に亡くなる農民すらある。DARの地域オフィスが非能率。また、地域によって割り当てる予算に格差がある。
  • 政府は農民に十分な土地の対価を保障するべきである
  • 土地を要求しても、土地の所有者がはっきりしないケースがある。
  • また、以下のようなケースはとりわけ土地所有者のはっきりしない土地で起きている
     小作料問題...収穫物は法的には地主25%/小作75%の割合となっているが、なかには50/50という法外な小作料を要求するケースもある。
     農民同士を対立させる...地主が農地改革を要求する農民に対して、別の農民を組織し、武装させて対立させる。農民同士が戦うことになる。
  • ハラスメント...農地改革を要求する農民に対して、地主は冤罪の嫌疑をかけ(たとえば農地のココナッツを盗んだ、など)裁判に訴えるなど、リーガル・ハラスメントもある。
  • 農地の対価が高すぎる...農地改革によって土地の分配を認められた農民は、土地の対価を払わなければならない。しかし。その土地代が高すぎて払えない。たとえば多国籍企業のプランテーションとなっているようなところでは1ha120万ペソもする場合がある。どのように土地価格を査定するのかについても、キャンペーンをしている(多国籍企業は直接土地所有はできない)。
●具体的なケース
  • 先日あったケースでは、土地が環境天然資源省(DENR)と農地改革省(DAR)の両者の管轄にまたがることがわかったが、両者の土地に対する政策が異なり、たいへん困ったことがあった。パキサマが間に入り、農民リーダーとともに、両役所の代表者がいっしょに座って話し合える場を設定した。
     その結果、DARがリーダーシップを取って、統一見解を出すことになり、DARの方針に対してDENRが署名すればよいという結果になった。このように、パキサマでは農民から問題を上にあげていくボトムアップアプローチをとるとともに、政府の役人などと彼らが同席し交渉できる場を作っている。
●アロヨ政権と農地改革
  • アロヨ大統領は演説の中で、自分の政権下で2001年にもっとも農地改革が進んだ(10万337ヘクタール)ことを誇っているが、これは誤りである。私有地と公有地があるが、彼女の政権下で進んだのは公有地の部分。政府が主体的に農地改革を実施したかどうかは、私有地の、強制接収の部分を見なければ判断できないはず。私有地71000haのうち、ここだけをみると15,450ha程度だけである。
● 多国籍企業
  • 多国籍企業が、遺伝子操作をした作物について扱わないようキャンペーンを行っている。
● その他
  • 農民は土地を手にしたからといって、必ずしも農地だけで生活できるようになるわけではない。収入の向上も必ず実現するわけではない
  • 土地を手にすれば土地改良や、肥料などの資材の投入が必要になる。そのためには金がいる。
  • 自分の土地をもち、自分でコントロールできることが大事なのだ。そのことが食料への権利の保障につながる。そのため、政府に農民に対する補助金を出すようキャンペーンなどを行っている。
  • せっかく獲得した土地を、維持できずに手放す農民も多い。いったん手に入れた土地を手放さないようにと教育している。
  • 土地の権利は人権である。農民にとって土地は命。だから自分の土地を自分でコントロールできる権利は人権。それはまた、農民が食料への権利を得ることになる。フィリピンでは歴史的な背景から、人権というと政治的権利をイメージする意識が強いが、今はそれだけではない。
  • 事務所のポスターのスローガン:
      大きな私有地を分与せよ。
      農地改革に問題あり。闘おう。
      農民に発展を。農地改革の予算を増やせ。