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8月1日(木) サリガン(オルターナティブ法律支援センター)

SALIGAN (Sentro ng Alternatibong Lingap Panligal: Alternative Legal Assistance Center)

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話した人
1.Rodolfo G. Gabasan (ロドルフォ・ガバサン 法律リサーチ担当=男性)
2.Joan C. Mosatalla(ジョアン・モサタリャ 弁護士=女性)

●SALIGANという名称と設立の経緯
  • オルターナティブ法律支援センターの意。ただし、タガログ語で「サリガン=本質的な」という意味もある。
  • 1987年に2人の弁護士と1人の法学生によってはじめられた(この学生も現在弁護士)。設立の動機は、ベーシック・セクター(農民、労働者等)に影響を与える法律について、弁護士たちが説明する必要があったから。
  • 最初はベーシックセクターに限られていたが、1990年に範囲を拡大し、都市貧困層と女性も対象とした。
  • 現在は26人のスタッフが活動。うち21名がマニラ、5名がルソン島南部ビコール州ナガ市にいる。弁護士12名のほか、法律調査担当、総務担当のスタッフがいる。
●目的:
① 法による支援を行うことで、人々の真の参加を促す。地域コミュニティ、女性、労働者などが、法的プロセスにアクセスして彼らの権利を伸張し、社会に参加できるよう促す。
② 法に対する提言も行う。
③ de-professionalize the law:法を非専門化する、伝統的法律家による法の独占をなくし、人々に法的知識とスキルを伝える。そのためにリーガル・リテラシー・キャンペーン(法的識字)や、パラリーガルによる情報提供を実施。
●プログラム:
① 訴訟支援--:ベーシック・セクターや地域の住民団体に対して、相談活動も実施。飛び込みの相談もある。
② 裁判所での法廷闘争以外での、オルターナティブな法的活動の支援
③ リーガル・リテラシーのプログラム:オルターナティブな法律教育。ベーシックセクターは、ローカルなガバナンス(統治)に参加するために、自分に影響を与える法を知る必要がある。そうした法を伝える。
 例/たとえば1992年、「都市開発および住宅法」(Urban Development and Housing Act)が制定されたが、都市貧困層は、この法ができたことすら知らなかった。そこで、研究会、セミナーなどを開催し、ワークショップの中でゲームなども使いながらこの法を紹介した。こうしたワークショップでは、まず法を説明し、参加者がどのように受け止めたり、解釈するのかを観察し、さらに次に向けてわかりやすい説明を考える
 例/こうした学習会では、まず権利にはどのようなものがあるか、義務とは何か、法の下では、侵害された権利にどのような救済があるのかなどを学ぶ。権利意識が身につくと、人々はコミュニティに帰ってこれを実行し、ローカルガバナンスに参加しようとする。そのことで、行政の透明性が高まる。
④ パラリーガル(裸足の法律家)育成--法律を知識として教えるだけでなく、技術的なことも訓練する。弁護士補助だけでなく、自力で供述書を作れるようになる。パラリーガルは、パラメディカルの役割と似ている。なぜなら、パラメディカルも地域で緊急事態が発生したら、対応の仕方を知っている。
 例/ネグロス東州では、女性の福祉について、実際に条例案を書き、1994年可決された。この条例は女性のための州評議会を創設することを定めたものである。(Ordinance 54, 1994 Bacolod City, Province of Negros Occidental: An ordinance promoting the welfare of women, creating for the purpose, the provincial council for women )
⑤ 政策提言---ベーシック・セクターが自分で法案、条例案等を書けるようにする。セッションの終わりには、ドラフトを書いて、行政に提出できるようにしたりする。
⑥ リサーチと出版---女性や労働者、貧農、都市貧困層などの問題をどのように解決できるかを研究するほか、Popularlizing Law(法の民衆化)を行う。できるだけ自分たちに理解できるようシンプルなものにする。
  • その他:上記以外の重点セクターとして、漁民、先住民族、海外移住労働者、インフォーマル・セクターなども支援している。
  • 女性の人権についてはwomen's unitをおき、取り組んでいる。女性が自分の権利に目覚め、具体的に権利侵害に対してどのように行動したらいいのか、法の下での補償の規定、役所の組織などについて教える。
     加害男性を訴えることの支援も行う。配偶者のDVに対して、法的別居(リーガル・セパレイツ)や婚姻無効(アナルメント)の手続きの支援を行うなどもする。
     また現在、DV禁止法案と女性虐待禁止法案があるが,政府はあまり熱心に取り組んでないので、タスク・フォース・マリアという名称で実行委員会を結成し、出版や解説などのキャンペーンを行っている。出版物の中では、DVの歴史的背景などについても触れている。不平等は社会のものの見方、すなわち文化の中に根ざしている。歴史という言葉history(his story)に見るように、歴史自身が男性中心。Herstory(her story)という言葉をあえて使い、歴史を捉えようとしている。
  • 海外移住労働者については、法的支援ではないが、彼ら自身に権利を伝えるためのキャンペーンを行っている。不払い、契約満了以前の解雇、斡旋会社による搾取などが深刻な問題である。
●パラリーガルについて
  • 法廷における仕事:証拠を集めるほか、能力あるパラリーガルなら、供述書や最初の申し立て書も作成する。また、弁護士に代わって、裁判のモニターをする。こうした仕事によって弁護士の仕事が軽減される。
  • 準司法的機関:たとえば労働委員会,や市(町)農地改革事務所などでは、弁護士でなくても出廷して弁護活動ができる。
  • コミュニティにおける仕事:周辺化された社会セクターの権利を守るために働く。COの仕事とともに、地域の問題を法的側面から明らかにし、何が起こっているのか、どのような影響があるのかをコミュニティに伝える。
  • また、extra-legal, meta-legal activitiesを実施。法廷だけが正義の結果を出せる場ではない。したがって問題に関して世論に訴える活動も重要。たとえば、議員に手紙を書いたり、ハンガーストライキを通じてセクターの問題を世間に訴えるなど。
  • また、異なるセクター間のネットワークや共闘も大切。たとえば土地問題などは、農民と同様に都市貧困層にも共通する問題。そこで、両者が集まって協力するための支援をする。
  • そのほかSALIGANではバランガイ司法システムに関する研修も担っている(CHRの研修も)。ただし、人権委員会の地方事務所(regional office)との正式なつながりはない。
  • パラリーガルの養成は、パートナー組織を通じて実施している。POが依頼してくることもある。対象組織との間に、覚書を交わして実施する。
●パラリーガルの条件
  • 1年間の研修プログラムに参加できるか、研修は主に週末だが時間がとれるかどうか。
     トレーニングには4段階あり、ベーシック・リーガル・リテラシー、ベーシック・パラリーガル・トレーニングからアドバンスド・パラリーガル・トレーニングまである。アドバンスは、さらに交渉スキルや供述書を作るスキルなどを身につけるためのコースである。それに毎月リーガル・クリニックを行っている。
  • 金銭的負担---トレーニングの予算は組織として確保しているが、研修会場までの交通費や食事などの負担。
  • コミュニティのメンバーであること---パラリーガル・トレーニングの対象者は、SALIGANから選ぶことはしない。パートナーNGOや、コミュニティの人々が自分達で選ぶことが大切。ただし、SALIGANが人選にまったく関与しないと、別の問題も起こることがある。たとえば、以前カトリック教会が教区からの候補者をトレーニングに送ってきたことがあったが、神父が人選を行ったために、「動員されてやってきた」という意識の参加者に遭遇したことがある。
●短期法律コース(新規)
  • 新しく短期の法律コースをつくり、憲法、刑法、民法、ベーシックセクターのための法律などをクラス形式で徹底的に学ぶ短期コースを開始した。これはあくまでパイロット、実験プロジェクトであり、ペザンテックというパートナーNGOと協力して実施している。
●国際人権基準について
  • たとえば居住の権利について考えるのであれば、国際人権規約に触れる。また女性の権利に関わる法案を出すときに、国際的な基準に触れる必要性を痛感した。というのも、ジェンダー間の平等については,国際的な規範を参照する必要があったからである。
●受け付けない相談はあるか?
  • 地主からの依頼、女性の権利に反する依頼などは断る。
●助成
  • フォード財団、カナダ国際開発庁(CIDA),ミゼリオール(ドイツ)などの助成を得る。事務所はアテネオ・デ・マニラ大学構内にあるが、大学とは直接関係はない。ただし大学関係者の相談を受けることがある。
  • こうした組織の弁護士は、一般の弁護士に比べてサラリーが格段に低い。一方、弁護士はつねに最高の知識を有していることが期待される。そこで、スタッフの弁護士を海外研修に出すなどし、学んできたことをスタッフで共有するなどの取り組みを行っている。