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8月2日(金) 「ネパタリA.ゴンザレス高等学校」

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Mataas ng Paaralamg Neptali A.Gonzales (メトロマニラのマンダルヨン市の公立高校)
「価値教育」のデモ授業見学

●学校について(Evangelina A.Diaz校長より)
  • 校名は、この学校の建設に尽力した、ネパタリA.ゴンザレス(マンダルヨン市元市長・元上院議長)の名前を冠している。公立学校。以前の学校が人口爆発によって生徒が急増したので、市長の意向で新設された。現在、3517人の生徒が在籍しており、教員も170人を超える。
  • 相変わらず生徒数が増えているため、教室が足りず、新しい校舎を建設中。
  • 1クラスの生徒数は70人ほどだが、教員が献身的に働く限りは問題はないだろう。
●デモンストレーション授業:ヘンリー・A・サビドン(Mr. Henry Sabidong)先生
 ① 前回授業の振り返り:良い国の属性・条件は何であったか
  • 国が繁栄するにはいくつかの条件がいる。その6つとは、正直, 愛, 尊敬,誠実, 誇り,信仰。
 ② 導入1
  • 民衆抑圧を描いたホアン・ルナによる絵画スポラリウムを見て何を感じる?(生徒の回答)話すことができない苦悩など。
  • その目的は?民衆を目覚めさせるため、スペイン時代の苦しみを思い起こさせるため
 ③ 導入2
  • EDSA II(EDSA I は、マルコスからアキノ大統領に政権移行したときの政変で、EDSA II は、エストラダからマカパガル大統領に移行した政変を指す)のビデオをみて、どう感じるか?
  • そのとき、フィリピン人はエストラダ大統領に対して、どのような感情を表現したか?
  • (生徒の回答)...みんなが一致していると感じた/とてもデモクラティックな国で幸せ/Erap(エストラダ)がかわいそう。貧しい人のために働いた人なのに。
  • サビド先生のメッセージ...ビデオの中には、エストラダを支持する人も出てくれば、反対を主張する人も登場。このような異なる意見がどちらも存在することが民主主義である。
 ④ 憲法の、「表現の自由」に関わる部分を示す
  • 表現の自由、平和的に集会をもつこと、請願・嘆願、言論出版の自由を妨げる法は許されない。
  • 表現方法にはいろいろある。
  • EDSA II では、支持と反対という二つの極の間でそれぞれの意見が表明されていた。その表現方法にもいろいろあった(デモ、シュプレヒコール、ダンスなど)

<グループ・アクティビティ>
 ⑤ 次の5つのテーマから、1つを選び、グループの主張を考え、デモンストレーションせよ。デモンストレーションの方法も選択すること
  • 5つのテーマと生徒は次のプレゼンテーションは以下の通り。
    ① Peace and Harmony(平和と調和)...母子の姿を描いた人間彫刻で表現。
    ② Death Penalty(死刑制度)...討論(悪人がいる限り残すべき/生命は神から与えられたもの。これを奪えるのは神だけ/死んでしまったら戻れない、終身刑で代替できないか)
    ③ 海外移住労働者...メッセージのトーク(あなたの国で働く外国人労働者は私達の父母。私達は彼らがいなくてさびしく思うが、彼らが私達の暮らしを支えている。彼らに正義と、シェルターを与えて欲しい)
    ④ 環境保護...絵画
    ⑤ 政府関係者の汚職(graft and corruption)...ラップ・ミュージックで表現。
 ⑥ 感想
  • 思ったことを表現する方法はいろいろある。短時間で創造的な方法を編み出し、一体感を味わった、など
 ⑦ 応用
  • 次のような場合、どのように対応するか
     例/請願行動を禁止した政府...政府に手紙を書く、署名を集める。
     例/夜更かししてはだめだと父親に注意を受けた...権利には責任が伴い、権利には制約が加わる。
 ⑧ 学んだこと...紙に書いて前へ出て発表
  • あなたの気持ちを表現する自由。
  • その自由を守るために行動することの大切さ...憲法、世界人権宣言第19条にもある。
 ⑨ 宿題...新聞のエディターに、投書を送る。それらは実際に送る前に、いったん提出すること。
● Q&A
  • 家族・親戚に海外で働いている人はいるか...クラスで15人程度。行き先は台湾、香港、サイパン、日本(東京、横浜)など。
  • 人権教育を学んでもっとも楽しいこと...「表現の自由」。自分はジャーナリスト志望だから。自分の感情を表現できるから、etc
  • このクラスにはいじめがあるか...「僕は色が黒いからと馬鹿にされる。黒いほうが美しいと言い返す」「ホモセクシュアルだと馬鹿にされる」等
【先生方とのオープン・フォーラム】
● どのように物理などの教科に人権教育を統合するのか
  • たとえば、シンプルな機械を利用するにしても、一人が使いたいだけ使うのではなく、すべての人が使えるようにすべきだと教える。
  • 教科に関わり無いが、必要な「修正」を行っても「罰」は与えない
  • 教科で言うと、価値教育、技術家庭(home and economics)は人権教育をすでに統合しているが、理科系科目はこれから始めるところ(初等教育ではすべての科目に統合されているが、中等教育ではこれからである)。
● 今日、デモ授業をしてくれた生徒について
  • もっとも成績のよいセクション1の生徒。新聞部の子が多く、学校新聞などで表現の訓練を受けていることも、本日のプレゼンテーションに影響を与えていると思う。
  • ただし、同じスタイルをつかって、成績がより低い子ども達にも同じ授業をやっている。所属するセクションに関わらず、教育を同じように受けること自体が権利である。
  • 生徒はグループ・アクティビティに慣れている、これは成績のためというより、フィリピンの学校が伝統的な講義中心のアプローチをすでにやめているからである。教育省では新しいカリキュラムをつくり、アクティビティを中心に、生徒中心の方法論を導入している。教師の役割はそれをモニターすることである。グループ・アクティビティは、生徒の能力やスキルを伸ばすものである。
  • 生徒のバックグラウンド...ミドルクラスの家庭の生徒。保護者は工場労働者、運転手、海外移住労働者など。民間や政府の奨学金をもらっている子も少なくない。
● 人権教育によって生徒に何を伝えたいのか
  • 1年生では子どもの権利から学び始め、いまこうした子ども達がハイスクールにき始めている。バンタイ・バタキャンペーン(子どもに権利を認識させるキャンペーン)はすでにかなり浸透。人権に対して開かれた意識をもった子ども達が育ってきた。しかし、権利について知るだけでなく、次は責任について教えることも必要。
  • 人権教育によって、家庭や地域で虐待を受けたら、子ども達はバランガイキャプテンや警察に通報するようになった。そこで、公立学校でも、体罰などができなくなった。
● 子どもとの信頼関係
  • 今日のデモンストレーションをした子どもたちは、サビド先生が昨年担任を受け持ったクラスの生徒。そこで、先生は子どもの背景をよく知っている。価値教育の教師であるので、子どもとじっくり面談をし、問題ある生徒とは、なぜそのような態度をとるのか、何か問題なのかなどを話す。そうすると、心を開いて話してくれる。また、子どもとはお互いにファーストネームで呼び合っている。
  • 教員も人間である。人間として生活もある。教員としてだけでなく、人間として付き合うことが大切。