川崎市職員の山田貴夫さんに、川崎市と韓国・富川(プチョン)市との10年以上の自治体交流・市民交流の経過と成果、そして、外国人労働者の増加や国際結 婚等を背景に急速に「多文化社会に向かう韓国の状況について、交流の現場から報告をいただいた。
韓国は、05年にアジアで初めて外国人住民に地方参政権を認め、07年には「在韓外国人処遇基本法」が国会を通過するなど「共に生きる社会」をめざした様 々な取り組みが進められているが、これらは中央政府からの改革であり、例えば、外国人政策や環境問題などで地方自治体が先行して中央政府の政策に反映させ てきた日本の流れとは違うスタイルである。
また、川崎市は、1996年に全国初の外国人住民代表者会議を設立するなど、外国人の人権政策に関して、自治体として先進的な取り組みをすすめているが、 山田さんは、設立当時の担当職員として尽力されるなど、川崎市における多文化共生のまちづくりに行政・市民活動の両面から関わってこられた。(以下は、当 日配布されたレジュメより)
多文化共生をめざす川崎の市民運動と韓国の市民運動との出会い・交流・発見
◆ 川崎市の外国人市民政策
◆ 韓国・富川(ぷちょん)市との交流
◆ 交流から学んだ韓国の多文化共生政策
1996年 | 友好都市締 結、職員交換派遣 |
1998年 | 世界人権宣言50周年記念、金芝河・金民基・洪成壇氏来日、川崎のハルモニ写真展を富川で開催、朝鮮学校ブラスバンドの富 川公演の挫折 |
2000年 | 高校生交流の 開始〔朝鮮学校生徒も参加〕 |
2001年 | 歴史教科書問 題と富川市議会からの要請書「歴史を変えるな未来を変えよう」 |
2003年 | 『川崎・富川 市民交流会』『富川・川崎市民交流会』相互協力協定書調印 |
2006年 | 10周年を記 念して、富川市フィルハーモニー100名を招聘して、川崎で演奏会 |
2. 見えてきたもの 政治運動から市民運動への拡がり
全国組織をたばねる大きなNGO(経済正義実践連合、参与連帯等)
自治体職員はまだ官僚的?
キリスト教会、仏教会の運動〈宗教団体の社会活動〉
共通する社会問題(子育て、交通、環境・エネルギー、過疎と都市集中化、加熱する教育問題)から改革へ。戸主制から個人登録へ(民法改正)、性売買禁止 法、生活保護法改正、基地問題等
3. 韓国の外国人問題 在韓中国人〈台湾省出身者〉戦後7万人から現在2万人に減少
1990年代オーバーステイのネパール人の街頭デモ
過疎化と外国人花嫁問題
韓国と中国の国交回復と中国の朝鮮族の韓国入国
4. 多文化社会への動き〈資料〉
1945年 | 植民地支配からの解放、 | |
1948年 | 憲法において地方自治を保障し、その一般的ルールを定めた地方自治法を制定 | |
1950年 | 朝鮮戦争~53年休戦 | |
1961年 | 軍事的クーデタによる軍事政権の誕生により地方自治体の機能停止 | |
1987年 | 6月抗争で独裁政治に終止符が打たれ、同年、大統領選挙の直接投票等を獲得 | |
1991年 | 地方自治制度が正式に復活 | |
1995年 | 制度復活後最初の地方選挙実施 | |
1998年 | ・ 2002年地方選挙実施 | |
2004年 | 1月 | 住民投票法制定・公布(継続して居住で きる在留資格を有する者で、地方自治体が定める20歳以上の外国人に住民投票権を付与) |
2005年 | 8月 | 選挙法改正(永住資格取得後3年を経過 する19歳以上の外国人に地方参政権付与) |
2006年 | 5月 | アジアで初! 地方選挙に外国籍住民が投票 |
2006年 | 7月 | 国家人権委員会が差別禁止法案を国務総 理に勧告 |
2006年 | 8月 | 行政自治部地方行政本部、「地方自治団 体 居住外国人 地域社会統合支援業務推進指針」策定 |
2006年 | 10月 | 居住外国人標準条例案公表〔行政自治 部〕 |
2007年 | 4月 | 在韓外国人処遇基本法案国会通過 |
※ ひるがえって日本はどうなっているのか? 1995年 最高裁判決; 外国人の地方参政権、憲法許容説
住民投票は自治体の条例で実施可能、法は存在しない。
日本の外国人政策; 管理強化に向かっていないか?
※ 市民運動のつながり 2004年、日本における地方参政権獲得運動が韓国に要請、韓国の協力〔保守派の相互主義が崩れる〕東京集会からソウル集会、韓国中華学校訪問、弁護士・ 学者との交流
<参考資料>
山田貴夫「川崎における外国人との共生の街づくりの胎動」月刊『都市問題』89巻6号(1998年6月)
山田貴夫「市民同士の連帯を求めて」『世界』(1998年10月号)