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「移住女性の人権と多文化共生を考える」スタディツアーを終えて
藤木美奈子 (Park Minaja) (作家、NPO法人「WANA関西」代表理事)
総評としては、大満足! の旅でした。おおいに語り、よく学び、そしてよく食べ、よく呑みました。
7月31日夜、無事に大阪市立大学へ予備論文(博士論文)の提出を終え、翌1日早朝、関空から飛び立ちました。「これを提出したら、韓国や」というニンジンぶら下げ作戦は見事奏功したのであります。しかし、7月末はなぜか学会の査読論文修正の提出期限とも重なり、なんとか2本を提出して飛行機に乗ったものの疲労困憊でぼろぼろ。右目はものもらいが2つ、肩と背中はパンパンに腫れてめまいがして、右手首も痛んでひねることができませんでした。よって機内では「スタディもするが、マッサージと垢スリもね」、そんな考えを頭にめぐらせていました。
最初の訪問先となった「韓国国家人権委員会」では、チョン・カンジャ常任委員の肌の美しさに惚れ惚れし、金東勲先生が超~長い通訳をメモなしでサラリとやってのけることに目を見張りました。金先生は、読み書きもロクにできない2世である私のアボジと同じ年齢。教育が違えばこうも人生が違うものかとシミジミ...。 次なる「移住女性人権センター」では、「ベトナム女性は逃げません」という悪辣な移住女性PRに、彼女たちがおかれている立場を再認識。また、一億ウォン(1,200万円)の活動費を個人で借金した代表、ハン・クギョム牧師の迫力にひたすら敬服。信仰は偉大です。
また、貸し切りバスで、基地村で性売買に従事する女性たちを支援するNGO「トゥレバン」も訪問。暑さで汗ダラダラ流しながら、長時間、熱心なレクチャーを若い女性スタッフから受けました。そのキリリとした、まだあどけなさの残る横顔に、思わずお姉さんは(私)ちょっと意地悪な質問をしてしまいました。「活動理念はわかりました。で、あなたはどんな気持ちで当事者に向かい合ってるの?」と。優秀な大学を出てストレートでNGO活動に飛び込むスタッフの「あまりに純粋な」選択肢に、私はこう聞かずにおれなかったのです。頭のよい彼女はそれに対し、これは個人的な問題ではなく、社会問題。自分たちはこの活動を通して戦争(基地)反対を具現化したいのだ、と模範的な回答をされました。まあ、今回はこれくらいにしといたろ。10年後の彼女と一杯呑みながら話せる日を楽しみにしています。
メイン・イベントの梨花女子大でのシンポジウム「女性の人権の視点から見る国際結婚」では、段取りと詰めの荒さにハラハラしつつも、女性研究者たちの熱い語りに感心。何よりも、同時通訳者2名の優秀さにびっくり。朝10:30~から夕方5時までの長丁場の終盤戦、研究者たちは弾丸のような速度で韓国語をまくしたてつづけましたが、ブースの通訳者は一歩も遅れず、最後は絶叫に近い日本語をリアルタイムで私たちのイヤフォンに届けてくれました。ふだん通訳者の力量にフラストレーションが溜まる経験も少なくないのですが、迫力の仕事ぶりに、「あの人の母国語は何?」と思わず問うてみたくなった参加者は多いでしょう。さすがは多文化社会でございます。
西大門刑務所については...わかっちゃいるけど、あまりに反日感情だけがほとばしる演出の数々。私的には最後のところで、「だから戦争はやめましょうね」と締めくくってほしかったのだが、そんなこと、望むべくもありませんわな。ま、これ言い出すとキリがないので、またね。
個人的には、06年4月から始めた韓国語習得の実力を試すべく、鼻息荒く挑んだ2度目の韓国でした。その評価は5分5分というところ。韓国語で買い物ができたり、駅や電車のハングル文字を読めたりと、たしかに成果を感じる瞬間もありましたが、込み入った話になるとやっぱり英語に頼ったり。でも、1度目の訪問ではまったく話せなかったことを考えると、大きな成長ですよね。3度目はもっと話せるようになりたい。カタコトでも言語を得たことで、自分のルーツにようやく近づき始めた...帰りの機内で、そんな喜びをそっと胸に、ワインをお替りしまくるわたしでございました。皆さま、お疲れさま。