ヒューライツ大阪は
国際人権情報の
交流ハブをめざします
リピーターとして考えること
初瀬龍平 (京都女子大学教授・ヒューライツ大阪企画運営委員)
私がヒューライツ大阪のスタディツアーに参加するのは、今度で4回目である。最初が2002年のフィリピン、第2回目が2004年のインド、第3回目が2005年の韓国であり、その他の年は勤務の都合で参加できなかった。2002年のフィリピンは、ヒューライツ大阪として初めて企画したスタディツアーであった。
ヒューライツ大阪のスタディツアーの魅力は、個人としてはなかなか行けないフィールドに行けることや、普通には会えない人に会えることである。フィリピンでは、一般の外国人に立ち入り禁止の、パヤタスのゴミの丘に登った。インドでは、午前中であるが、オールド・デリーで売(買)春街の移動薬局を見せてもらった。韓国では、前回は8月15日の光復節60周年「南北海外統一大祝典」に参加し、今回は、米軍基地周辺で働く女性の自立支援組織のトゥレバンを見学した。どのツアーでも、当地の責任者の方々などからお話を伺い、質疑の時間が設けられていた。その場所はNGO事務所などで、時期はいつも夏であるから、部屋はとても暑かったが、私には、郷里茨城の田舎の夏を思い出させるものがある。
フィリピン、インド、韓国では、国家人権委員会を訪問する機会もあった。短時間の訪問で、国家人権委員会で細かい議論をすることはできないが、その存在について考える良い機会と刺激となっている。それは、日本にはこの国家機関がないからである。
この他にも、数日間の日程で、いろいろな人権侵害のフィールドや人権NGOへの訪問、関係者との討論、それに移動の時間と、予定がびっしりと組まれているので、いつもほとんど自由時間がない。その間の息抜きと言えば、食事の時間である。4回のツアーでいつも感心するのであるが、食事がおいしい。超高級でなくて、現地の人たちが日常的に愛するレストラン、食堂で食事をしていると、現地の文化の深みが垣間見えるような気がする。これがパック・ツアーであれば、高級そうにみえるレストランで、現地名物と称する、あまりおいしくない食事を食べることが多くなる。
スタディツアーで、行く場所、会う人、食べる食事、泊まる場所などで、参加者に安全で良いもの提供しようとすれば、企画者は、日頃のネットワークを駆使したり、十分に慎重な下見をしておくことが重要となる。これは、ツアーそのものでは見えない「水を運ぶ」(サッカー日本代表オシム監督)仕事である。
私は、日程的にややきついが、普段学べないことを学べる機会として、ヒューライツ大阪のスタディツアーを利用してきた。私としては、話はこれで終わってよい。しかし、15人定員のスタディツアーで、何回ものリピーターが出てくることは、ツアーの良さを示す証拠ではあるが、少し問題であるかもしれない。
今回のスタディツアーでの一番の問題は、大学の学部学生の参加者がいなかったことである。若い人々に、アジア各国の人権組織、NGO組織を知ってもらい、人権侵害的状況の場に立ってもらい、現地の若い人々と交流してもらうことが、将来を考えるときに、ひじょうに大切なことと思われる。前回の韓国のときには、韓国の学生と交流する機会も設けられていた。ヒューライツ大阪側からすれば、この点が今後の課題となろう。最後に付け足しておくと、私はヒューライツ大阪の企画運営委員であるので、この課題は私にフィードバックしてくる。