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1996年の国連の動き

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  5. 人権条約機構

2 国連人権小委員会

 国連人権委員会の下部機関である人権小委員会(正確には少数者保護および差別防止に関する小委員会)第48会期は、8月5日から 30日にかけて開かれた。39の決議、21の決定を採択し、その報告は国連文書E/CN.4/1997/2-E/CN.4/Sub.2/1996/41に まとめられている。また人権委員会での採択を求める12の決定案を採択した。

(1) 1503手続による非公開の審議

 人権侵害の通報に関する作業部会は、小委員会の前の2週間にわたって会合をもった。内容は非公開のため不明。重大な人権侵害に関する検討がここで行われ ている。

(2) 個別の国の人権状況に関する決議

 コソボ、ルワンダなど7カ国・地域に関連する決定・決議を採択した(アジア・太平洋地域の国は含まれていない)。

(3)作業部会による検討

・現代的奴隷制に関する作業部会

  この作業部会は1974年に5名の委員の構成で設立され、奴隷条約、人身売買禁止条約などに関連した状況の監視、検討を行う。小委員会に先立って、6月 17日から26日に開催され、報告(E/CN.4/Sub.2/1996/24)を小委員会に提出した。作業部会では、奴隷条約の批准状況、債務奴隷、売 春その他の目的のための人身売買、児童の売買やポルノ、移住労働者、女性への暴力なども含む議題について討議、勧告を採択している。
  なお、同作業部会に関連する研究報告としては、米国の委員リンダ・チャベスによる「軍事紛争下の体系的なレイプ、性的奴隷・奴隷類似慣行(予備的報 告)」(E/CN.4/Sub.2/1996/26)がある。なおこの最終報告は第49会期(1997年)に提出の予定。

・先住民作業部会

 1982年より活動を開始した先住民作業部会は、これまで先住民族の世界会議としての役割を果たしてきた(第部上村論文参照)。今回、第14回となる 作業部会は小委員会の直前の7月29日から8月2日にかけて開催され、報告が小委員会に提出された(E/CN.4/Sub.2/1996/21)。
 なお、関連して以下の研究が特別報告者によって行われている。

・先住民の文化遺産――補足報告(E/CN.4/Sub.2/1996/22)

・国家と先住民との間の条約等建設的な取決め――第3進捗報告、(E/CN.4/Sub.2/1996/23、最終報告は第49会期提出の予定)

・マイノリティに関する作業部会

 これは1995年の経済社会理事会決議により設置された。1995年8月28日から9月1日、および1996年4月29日から5月3日にかけて会合を開 催した(報告書はそれぞれ、E/CN.4/Sub.2/1996/2およびE/CN.4/Sub.2/1996/28)。マイノリティ権利宣言の促進と実 現や、マイノリティと政府の間の関係向上について検討を行う。

(4) 調査研究

 小委員会は以下のようなテーマで調査を行っている。

・女性と子どもの健康に影響を与える伝統的な慣行に関する特別報告者

 ハリマ・エムバレク・ワルザジ委員(モロッコ)による最終報告(E/CN.4/Sub.2/1996/6)が提出された。なお小委員会は、今会期、特別 報告者の活動の2年間の再延長を求める決議を採択した。

・人権と極度の貧困

 デスポイ委員(アルゼンチン)による最終報告(E/CN.4/Sub.2/1996/13)が提出され、小委員会は同報告を出版するよう求める決議を採 択した。

・人権、とりわけ経済的、社会的および文化的権利の享受と所得配分の関係

  ホセ・ベンゴア委員(チリ)による進捗報告(E/CN.4/Sub.2/1996/14)が提出された。最終報告は第49会期(1997年)の予定。

・人権侵害者の免罪(経済的、社会的および文化的権利)

 ギセ委員(セネガル)が担当し、第2中間報告(E/CN.4/Sub.2/1996/15)を提出した。国内および国際的な文脈で、経済的、社会的およ び文化的権利の侵害状況、侵害者を規定し、侵害者を罰するよういくつかの提案を行っている。なお、小委員会は次会期にて最終報告を提出するよう求めてい る。

・人権侵害者の免罪(市民的および政治的権利)

 市民的および政治的権利に関する報告はジョワネ委員(フランス)が担当しており、本小委員会において、最終報告書(E/CN.4/Sub.2/1996 /18)が提出された。1991年に開始された研究であるが、本報告では、これまでの議論、テオ・ファン・ボーベン(元委員)の「補償に関する報告」など を反映し、基本的な原則およびガイドラインからなる。

・司法の実施と補償

 これは特別報告者ではなく、会期中の作業部会のなかで検討された。議長/報告者はフランスのジョワネ委員である。ここでは、テオ・ファン・ボーベン元委 員の起草した「人権侵害および人道法侵犯による犠牲者の補償への権利に関するガイドライン(E/CN.4/Sub.2/1996/17)」の検討も行われ ている。

・非常事態を宣言、延長、停止した国に関する年次報告

 アルゼンチンのデスポイ委員により1985年から開始された報告書である。以来毎年、非常事態の宣言の状況をモニターするほか、非常事態の下での人権侵 害に関する考察を行っている(E/CN.4/Sub.2/1996/19)。

・人権と人口移動

 本来は専門家によるセミナーを開催し、その結果を受け特別報告者が最終報告を作成するはずだったが、財政問題などによりセミナーが開催されなかったた め、報告は提出されなかった。

(5) 人権基準策定

・人権侵害および人道法侵犯による犠牲者の補償への権利に関するガイドライン

 前項の「司法の実施と補償」参照。

・先住民族の遺産の保護のための原則とガイドライン案

 先住民族の文化遺産の保護に関する研究のなかで作成されている(E/CN.4/Sub.2/1995/26、E/CN.4/Sub.2/1996 /22)。

・居住権に関する国際条約案

 相当な居住に関する特別報告者の報告(E/CN.4/Sub.2/1994/20)の中で提案されており、現在、コメントを各国政府やNGOに求 めているところである。

・国際的な行事と強制退去に関するガイドライン

 この問題に関する国連事務総長の報告書が小委員会に提出されている(E/CN.4/Sub.2/1995/13)。

(文:川村 暁雄)