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国際人権ひろば No.66(2006年03月発行号)
国連ウオッチ
東北アジアにおける子どもの権利(後編※)
■子どもの最善の利益
もっとも理解されず、無視さえされる3つの原則に、子どもの最善の利益(第3条)、子どもの発達しつつある能力(第5条)と子どもの意見の尊重(第12条)がある。しばしば、これらの原則は単なるレトリックに終わってしまう。子どもが未来の重要な指導者としてみなされる文化では、この原則はこれ以上の説明を要さないであろう。これがまさに子どもの最善の利益の原則が過去にも増してより大きな注目に値する理由である。
第3条は子どもに関わるすべての措置をとるに当たって、公的もしくは私的な社会福祉施設、裁判所、行政当局または立法機関のいずれによって行われるものであっても、子どもの最善の利益が主として考慮されると規定する。さらに、締約国が、子どもの法的保護者の権利義務を考慮しながら、そのような保護を子どもに確保し、あらゆる適切な法的および行政的措置をとる責任を有すると規定する。すべてのステークホルダーの責任がこの条項の基礎にある。この条項は子どもを保護し尊重されるべき権利をもつ人として前面に押し出している。年長者への尊敬、親孝行、父親の優先と国家の優先などの文化は子どもを一義的関心事としてみる余地をほとんど残していない。現代の言い方でいうならば、トップ・ダウン・アプローチがこの地域では当たり前であったのである。この考え方は西洋の「父親が一番よく知っている」、という考え方を超えている。まず国があり、次に父親、息子、母親、最後に娘という順番である。このような社会構造は過去に権威主義的な意思決定をもたらし、特定の(当然子ども以外の)特別な利益が主要な関心事となることがあった。
■発達しつつある能力
第5条はさらに締約国が父母、または適宜地方の慣習により定められている大家族や共同体の構成員、法定保護者または子どもについて法的に責任を有する他の者が、子どもが権利を行使するに当たり、その子どもの発達しつつある能力に合った方法で適当な指示および指導を与える責任、権利および義務を尊重することを強調している。
この条項もまた、子どもの権利の十分な実現を確保する際の締約国の役割を強調している。また子どもの親や子どもに責任を有するすべての人の義務と責任を強調する。確かにこれらの人々の権利についても言及しているが、親やその他の人自身の権利が子どもの権利に優先することを意味しているのではない。条約は既に子どもの最善の利益が最大の関心事であることを規定している。条約はしばしば親権や子どもに責任を有する他の人の権利を放棄することを規定するかのように誤解されている。そうではなく、逆に締約国が、家族などが子どもが権利を行使するに当たって手助けができることを確保する手段を提供する責任を負うと理解されなければならない。子どもである時期は常に変化する時期であり、子どもは異なる発達段階に応じた能力をもつ、変化や発達の状況にあることを意味する。その人生の異なる時期における子どもの能力を認識することは子どものために決定を行う際には必須である。
■子どもの意見の尊重
第12条は締約国が自分の意見を形成する能力を持つ子どもが自分に関わるすべての事項について自由にその意見を表明する権利を確保することを強調する。その子どもの意見は子どもの年齢と成熟度にしたがって相応に考慮される。この条項は前述の2条項と合わせて理解されなければならない。子どもの最善の利益が最優先であり、子どもの発達する能力の性質を認識して、その子どもが自分に関わるすべての事項に参加する権利を与えられなければならないということである。これは、大小に関わらず、家族、学校、共同体または国家に関わること、私的または法的な事項すべての事項に当てはまる。
この地域の4カ国にとって課題となるのは子どもが権利を有する、社会の重要な要素であるとみなされる文化を創ることであろう。韓国や日本は中国と対照的に少子化の問題を抱える。ニーズに基づいたアプローチでは、高齢化社会にのみ対応することか、厳格な人口管理政策を実施することになる。真の課題はこれらの国々がこの問題をいかに子どもを考慮した権利に基づく方法で解決するかであろう。
政治的、経済的、または社会的構造に関わらず、子どもが最優先に考えられなければならない。
最後に、人権、ここでは子どもの権利の問題に人間という観点を入れるということを繰り返し強調したい。子どもが本当に未来の指導者としてみなされるならば、真の指導者になれるよう、現在の社会の一員であることを忘れてはならない。
(訳・ヒューライツ大阪 岡田仁子)
※ 前編は、
本誌前号(2006年1月発行・No.65)に掲載しています。前編では、子どもの権利条約からみた東北アジアの共通課題について論じられています。